フラグタンク入門:サンゴのフラグ管理と増殖システムの作り方
サンゴのカット苗(フラグ)を管理・増殖するためのフラグタンクの設計と運用方法を解説します。フラグタンクとは マリンアクアリストの間で「フラグタンク」は、サンゴのブリーディングや分譲に欠かせない専用設備です。フラグとはフラグメント(fragment)の略で、サンゴのカット苗を指します。

この記事のポイント
サンゴのカット苗(フラグ)を管理・増殖するためのフラグタンクの設計と運用方法を解説します。フラグタンクとは マリンアクアリストの間で「フラグタンク」は、サンゴのブリーディングや分譲に欠かせない専用設備です。フラグとはフラグメント(fragment)の略で、サンゴのカット苗を指します。
関連品種
フラグタンクとは
マリンアクアリストの間で「フラグタンク」は、サンゴのブリーディングや分譲に欠かせない専用設備です。フラグとはフラグメント(fragment)の略で、サンゴのカット苗を指します。フラグタンクはカットしたサンゴを癒合・成長させるための専用水槽で、生産効率と管理のしやすさを両立した設計が求められます。
主な目的は以下の通りです。
ブリーダーやサンゴ販売者にとっては収益の源泉であり、愛好家にとっても自分のコレクションを増やしたりトレードに活用する拠点となります。
システム設計の基本
水槽サイズと構成
フラグタンクは作業性を優先し、シャロー(浅型)水槽が定番です。水深20〜30cm、横幅60〜120cmの浅い形状は照明が均一に届き、ピンセットやハサミでの作業も容易です。水槽容量の20〜30倍/時間の流量を持つ循環ポンプを設置し、デッドスポット(淀み)を作らないよう複数の水中ポンプを角度を変えて配置します。
安定した水質維持にはオーバーフロー式が最も有利です。サンプタンク内にプロテインスキマーとリアクターを集約することで、水槽本体はスッキリ保ちつつ高い処理能力を確保できます。小規模ならハング式スキマーでも対応可能ですが、管理するフラグ数が増えるほどオーバーフロー化のメリットが際立ちます。
照明選定と配置
フラグタンクの照明は高性能LEDが基本です。SPS(ミドリイシ類)を主に扱う場合は450〜600μmol/m²/s程度のPAR(光合成有効放射)が目安で、ソフトコーラルやLPSなら100〜300μmol/m²/sで十分なケースが多いです。多種類を管理する場合は調光機能を活用し、照射範囲の強弱をつけて置き場所で対応できるよう設計します。照明は中央のフラグラックに均一に当たる高さに吊り下げ、ラック端への光量落ちを最小化します。
フラグラックとプラグの選択
フラグを並べるラックには、エッグクレート(格子状の樹脂板)やアクリル製の専用フラグラックが広く使われます。底面から10〜15cm持ち上げた位置に設置することで、照明の光が均一に当たり、底面への水流も確保できます。
フラグプラグはサンゴを固定する白いセラミックまたはプラスチック製の台座です。磁気式のプラグは水槽側面に貼り付けたマグネットで固定でき、垂直面にサンゴをディスプレイしながら管理できるため便利です。プラグのサイズはサンゴの大きさに合わせて使い分け、小型のソフトコーラルには直径2cm前後の小型プラグ、SPS・LPSには2.5〜4cmの大型プラグが適しています。
カット技術とフラグの作り方
ソフトコーラル(ナガレハナ、ウミキノコなど)は清潔なハサミやカッターで切り分けます。作業前に器具を海水で洗い、70%エタノールで拭いて乾燥させると感染リスクを下げられます。
LPS(トランペット、バブル、ブレインなど)は各ポリプ単位でカットします。石灰質の骨格を切断する場合はダイヤモンドコーティングのバンドソーやドレメルを使用します。骨格断面はあらかじめヨウ素液で軽く消毒し、癒合を促します。
SPS(ミドリイシ属など)は枝の先端を5cm以上の長さで切り取ります。カット直後はヨウ素系の海水浴(2分程度)や殺菌灯通水で感染リスクを抑えます。フラグプラグへの固定にはサンゴ用接着剤(シアノアクリレート系)またはエポキシパテを使用し、接着後は速やかに水槽へ戻します。
癒合期間の目安
癒合中は水流を弱めに、照明も通常の70%程度に抑えてストレスを軽減するのがコツです。
水質管理の徹底
フラグタンクは多くのサンゴが密集するため、水質汚染リスクが通常の水槽より高まります。硝酸塩・リン酸塩の蓄積を防ぐためスキマー能力は余裕を持たせ、炭素源添加(ウオッカドージングやNoPoxなど)で脱窒を促進する方法も効果的です。週1回の定期換水(全水量の10〜15%)も安定維持の基本です。
カルシウム・アルカリ度・マグネシウムのトライアングルは特に重要です。多くのサンゴが骨格を成長させる分、消費量が大きいため、カルシウムリアクターや2部式添加システムの使用を強く推奨します。目標値の目安は以下の通りです。
測定は週1〜2回を習慣化し、大きく外れる前にこまめに調整します。Salifert・Hanna社などの精度の高いテストキットを使うと管理が格段に楽になります。
フラグタンクの運用と記録管理
どのフラグがどの種類か、いつカットして、どのくらい成長したかを追跡するシステムが不可欠です。スプレッドシートや専用アプリ(CoralVueなど)を活用すれば、多種を混在させても管理しやすくなります。
フラグプラグには色分けや番号タグを付けて記録と紐付けましょう。ブリーダーとして販売する場合、元株のコレクター名・入手経路といった来歴情報は商品価値に直結します。希少種や著名なコレクターからのフラグは、来歴が明確なほど高値がつく傾向があります。
定期的に写真を撮影してサイズ変化を記録しておくと、成長速度の比較や水質変化との相関分析にも役立ちます。フラグタンクを体系的に運用することで、趣味の延長から本格的なサンゴブリーディングへのステップアップも視野に入ってきます。
