サンゴ水槽のKH・カルシウム管理|添加剤の使い方
サンゴの骨格形成に不可欠なKH・カルシウム・マグネシウムの関係と、2パート添加・カルクワッサー・リアクター等の管理手法を解説します。石サンゴ(LPS・SPS)の飼育において、KH(アルカリニティ)とカルシウムの管理は水質管理の中でも特に重要な要素です。

この記事のポイント
サンゴの骨格形成に不可欠なKH・カルシウム・マグネシウムの関係と、2パート添加・カルクワッサー・リアクター等の管理手法を解説します。石サンゴ(LPS・SPS)の飼育において、KH(アルカリニティ)とカルシウムの管理は水質管理の中でも特に重要な要素です。
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石サンゴ(LPS・SPS)の飼育において、KH(アルカリニティ)とカルシウムの管理は水質管理の中でも特に重要な要素です。サンゴは海水中の炭酸カルシウムを取り込んで骨格を形成するため、これらの数値が低下すると成長が止まり、最悪の場合は骨格が溶け出してしまいます。この記事では、KH・カルシウム・マグネシウムの関係性と、具体的な添加・管理方法を解説します。
KH・カルシウム・マグネシウムの関係
この3つの要素は密接に関連しており、どれか一つだけを管理しても効果が出ません。
| 項目 | 役割 | 天然海水の値 | 飼育水槽の目安 |
|---|---|---|---|
| KH(炭酸塩硬度) | 海水中の炭酸イオンと重炭酸イオンの総量を示す指標。サンゴはこれらのイオンをカルシウムイオンと結合させて炭酸カルシウム(CaCO3)の骨格を作る | 約7dKH(125ppm) | 7〜11dKH(SPSの活発な成長を促すなら8〜9dKH程度が理想) |
| カルシウム(Ca) | KHと組み合わさって骨格を形成する直接的な材料 | 約420ppm | 400〜450ppm |
| マグネシウム(Mg) | 炭酸カルシウムの沈殿を防ぐ「調停役」 | 約1280ppm | 1250〜1350ppm |
- カルシウムが不足するとサンゴの先端が白く細くなり、成長が著しく遅くなります。
- マグネシウムが不足すると、添加したカルシウムとKHが水中で勝手に結合して沈殿してしまい、どちらも上がらない状況に陥ります。KHとカルシウムがなかなか上がらないときは、まずマグネシウムを確認しましょう。
消費量の把握方法
添加剤を正しく使うためには、まず自分の水槽がどれだけKHとカルシウムを消費しているかを把握する必要があります。
方法は簡単です。水換え直後にKHとカルシウムを測定し、24時間後に再度測定します。この差が1日あたりの消費量です。たとえば、朝のKHが8.5dKHで翌朝が7.8dKHなら、1日あたりの消費は0.7dKHです。
| 水槽タイプ | 消費量の目安 |
|---|---|
| ソフトコーラル中心 | 非常に少なく、週に1回の水換えだけで補えることも多い |
| LPS中心 | 中程度 |
| SPS中心 | 消費が大きく、特にミドリイシが繁茂した水槽では1日に1dKH以上消費することもある |
添加方法の種類と選び方
- 2パート添加剤(ツーパート)は最も広く使われている方法です。AパートにカルシウムとBパートにKH成分が分けて入っており、等量を添加することでバランス良く補充できます。自動ドーシングポンプと組み合わせれば、24時間安定した供給が可能です。コストパフォーマンスに優れ、初心者にもおすすめの方法です。注意点として、AとBを同時に同じ場所に添加すると沈殿するため、時間差で添加するか、投入場所を分けましょう。
- カルクワッサー(石灰水)は水酸化カルシウムを溶かした飽和溶液で、蒸発による足し水として使用します。カルシウムとKHを同時に補充でき、pHを安定させる効果もあります。さらに、リン酸塩を沈殿させる副次効果もあるため、低栄養塩を維持したい水槽に適しています。ただし、pHが12以上と非常に高いため、一度に大量投入すると水質が急変して危険です。ドーシングポンプでの少量継続投入か、自動足し水システムとの併用が理想的です。
- カルシウムリアクターは、CO2を使ってアラゴナイト(サンゴ砂メディア)を溶かし、カルシウムとKHを供給する装置です。一度セットアップすれば安定した供給が続き、添加剤のコストが大幅に削減できます。SPS中心の大型水槽では最終的にリアクターに行き着くケースが多いです。初期投資は高めですが、ランニングコストはCO2ボンベとメディアの交換費用のみで経済的です。
日常管理のルーティン
KH・カルシウムの管理は、決まったルーティンに組み込むことが成功の鍵です。
| 頻度 | 内容 |
|---|---|
| 毎日 | ドーシングポンプの動作確認と添加液の残量チェック |
| 週に1〜2回 | KHの測定。KHは変動が大きい数値なので、高精度のテストキットを使用しましょう。Hanna Instruments社のデジタルチェッカーは精度が高く人気があります |
| 週に1回(大きな変動がなければ2週間に1回) | カルシウムとマグネシウムの測定 |
- 添加液が切れていたのに気づかず数日経つと、KHが急落してサンゴがダメージを受けます。
よくあるトラブルと対策
- KHが下がり続ける場合は、添加量が消費量に追いついていません。サンゴの成長とともに消費量は増えるため、定期的に消費量を再測定して添加量を調整しましょう。
- カルシウムだけ上がらない場合は、マグネシウム不足の可能性が高いです。まずマグネシウムを1300ppm前後まで上げてから、カルシウムの添加を行ってください。
- KHの急変はサンゴにとって最もダメージが大きい事象です。1日あたりの変動を1.5dKH以内に収めることが重要で、大量の水換えを行う場合も交換水のKHを事前に合わせておく必要があります。
添加のトラブルシューティング
- KHやカルシウムの管理で最もよくあるトラブルが「数値が思うように上がらない」というケースです。この場合、まずマグネシウムの値を確認しましょう。マグネシウムが1250ppm以下に低下していると、カルシウムとKHが水中で自然沈殿してしまい、いくら添加しても数値が上がりません。マグネシウムを1300ppm前後まで回復させてから、カルシウムとKHの添加を再開するのが正しい手順です。
- もう一つのよくあるトラブルは「KHの急激な変動」です。1日あたりKHが1.5dKH以上変動するとサンゴにダメージを与えるリスクがあります。ドーシングポンプの設定を見直し、24時間均等に添加されているか確認してください。大量の水換えを行う場合も、交換水のKHを事前に測定し、水槽のKHとの差が1dKH以内になるよう調整してから投入しましょう。
- 添加剤のボトルは直射日光を避け、涼しい場所で保管しましょう。特にカルシウム液とアルカリニティ液は混合すると沈殿するため、必ず別々に保管し、ドーシングチューブも分離してください。
- KHの安定が最も重要です。1日の変動幅を0.5dKH以内に抑えることを目標にしましょう。添加のタイミングを24時間均等に分散させることで変動を最小化できます。
ブリちょくでブリーダーの水質管理を参考に
ブリちょくでは、登録時に運営の審査を受けたサンゴブリーダーから直接購入でき、ブリーダーが実践しているKH・カルシウム管理の具体的な数値やノウハウを聞くことができます。特にSPSの色揚げに成功しているブリーダーの水質パラメータは、自分の水槽管理の最良の参考になります。