カルクワッサーとツーパート添加剤のリーフタンクKH・Ca補充完全ガイド|方式別の使い分けと設定手順
サンゴ水槽のKH(アルカリ度)とカルシウムを維持するカルクワッサー(石灰水)とツーパート(2剤)添加方式の仕組み・設定手順・使い分けを解説。水槽規模・サンゴ消費量に合わせた最適な補充方法の実践ガイドです。

この記事のポイント
サンゴ水槽のKH(アルカリ度)とカルシウムを維持するカルクワッサー(石灰水)とツーパート(2剤)添加方式の仕組み・設定手順・使い分けを解説。水槽規模・サンゴ消費量に合わせた最適な補充方法の実践ガイドです。
※本記事はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト・楽天アフィリエイト)を含みます
リーフタンクのKH・Ca管理はなぜ重要か?
サンゴが骨格(炭酸カルシウム:CaCO₃)を形成するためには、水槽水中に十分なKH(炭酸塩硬度・アルカリ度) とカルシウム(Ca) が常に供給されている必要があります。
- KH目標値:8〜12 dKH(SPS優先なら7〜9 dKH)
- Ca目標値:380〜450 mg/L(ppm)
- Mg(マグネシウム)目標値:1250〜1350 mg/L
これらのパラメータは毎日消費されるため、換水だけでは補いきれません。大型リーフタンクや高負荷SPS水槽では、専用の補充システムが不可欠です。
本稿では、最も広く使われる2つの補充方式——カルクワッサー(Kalkwasser) と ツーパート添加剤(Two-Part / 2-Part)——の仕組み・設定・使い分けを詳しく解説します。
カルクワッサー(Kalkwasser)とは
仕組みと特徴
「カルクワッサー」はドイツ語で「石灰水」を意味し、水酸化カルシウム(Ca(OH)₂) を純水(RO/DI水)に溶解した飽和溶液です。
水槽に添加すると以下の反応が起きます:
Ca(OH)₂ → Ca²⁺ + 2OH⁻
OH⁻ + CO₂ → HCO₃⁻- Ca補充:カルシウムを直接補充(飽和液4Lを150Lの水槽に加えるとCaが約24mg/L上がる)
- KH上昇:CO₂を消費することでpHが若干上昇、KHにも貢献
- リン酸塩(PO₄)の沈殿除去:水酸化カルシウムの添加でリン酸塩がカルシウムと結合して沈殿する
- pH安定化:夜間のpH低下(CO₂蓄積)を抑制
カルクワッサーの限界
- CaとKHは骨格形成で消費されるのとほぼ同じ比率で一緒に補われるため、どちらか一方だけを調整することはできない
- 過剰添加(pH 8.5超)はサンゴや魚にダメージ
- 高負荷SPS水槽では補充量が足りないことが多く、他の補充法との併用が必要
カルクワッサーの設定と使い方
準備するもの
- 水酸化カルシウム粉末(Seachem Reef Kalkwasser等)
- RO/DI水(カルキ・ミネラル除去済みの純水)
- カルクワッサーリアクター(攪拌容器) または 貯水タンク
- ATO(自動補水装置:Automatic Top-Off)
混合手順
- RO/DI水 1リットルに対し、水酸化カルシウム 約2〜5g を加える
- よく攪拌し、30〜60分静置して上澄みのみを使用(沈殿物は使わない)
- 飽和溶液の上澄みのCa濃度は約800〜900 mg/L
注意:水酸化カルシウム粉末は皮膚・粘膜刺激性あり。手袋・ゴーグル着用推奨。
ATO経由での自動添加
最も安全な添加方法はATO(蒸発補水装置)の補水源にカルクワッサー溶液を使う方法です。
- ATOが蒸発分を自動補水するタイミングでカルクワッサーを添加
- 添加速度が遅くなるためpH急上昇を防げる
- 1日の添加量は水槽容量の1〜3%以下が安全ライン
ドーズポンプ(ペリスタルティックポンプ)使用時:
- 1回の添加量を50〜100ml以下に設定
- 照明点灯中は光合成でもpHが上がるため、消灯後の夜間に少量ずつ添加すると夜間のpH低下を抑えやすい
ツーパート添加剤(Two-Part)とは
仕組みと特徴
ツーパート(2-Part)はその名の通り2種類の液体添加剤を使います:
- パートA(ベーキングソーダ系 / NaHCO₃またはNa₂CO₃系):KH(アルカリ度)を補充
- パートB(塩化カルシウム系 / CaCl₂系):Caを補充
代表製品:
- BRS(Bulk Reef Supply)2-Part: 業務用向け、コスト安
- ESV B-Ionic: 歴史あるバランスツーパート
メリット
- KHとCaを個別に調整できる(消費バランスのズレを補正しやすい)
- 設定・計算が比較的シンプル
- カルシウムリアクター不要
- 中〜大型水槽(200〜600L)で主流
デメリット
- ナトリウムと塩化物イオン(Na⁺・Cl⁻)が蓄積するため、添加量が多い高負荷水槽では換水頻度の増加が必要
- 添加量が多いのに換水が少ない状態が続くと、塩分組成が少しずつ偏るリスク
ツーパートの設定と計算方法
必要添加量の計算
基本計算式(1日当たりの補充目安):
KH添加量(ml)= KH消費量(dKH/日)× 水槽容量(L)× 換算係数
Ca添加量(ml)= Ca消費量(mg/L/日)× 水槽容量(L)× 換算係数計算の考え方(300Lリーフタンク):
- 測ったKH消費(dKH/日)・Ca消費(mg/L/日)を、製品ラベルの換算値で300Lぶんの添加量(mL/日)に直す
- 骨格の炭酸カルシウムの組成上、KHが1 dKH減るとCaは約7mg/L減る比率になる
※製品によって換算係数が異なるため、製品ラベルの指示値を優先すること。
ドーズポンプでの自動添加
市販のドーシングポンプ(Kamoer、Neptune DOS等)を使い、1日2〜4回に分けて少量ずつ添加するのが最適。
- 1回の添加量:水槽容量の0.1%以下(300L水槽なら300ml以下)
- KHを夜間・Caを昼間に分けてもよい(ただし水質への影響は軽微)
カルクワッサー vs ツーパート:どちらを選ぶべきか
| 比較項目 | カルクワッサー | ツーパート |
|---|---|---|
| 導入コスト | 低(粉末+ATO) | 中(液体2本+ポンプ) |
| 月々の維持費 | 低(粉末安価) | 中〜高(大容量購入で削減) |
| pH安定効果 | あり(夜間pH補助) | なし |
| KH/Ca個別調整 | 困難 | 容易 |
| 適した水槽 | 〜300L 中負荷 | 200〜500L 中〜高負荷 |
| 設定難易度 | 中(過剰添加注意) | 低〜中 |
組み合わせ使用(上級者向け)
高負荷SPS水槽ではカルクワッサー(ATO経由)+ツーパートの補完使用が有効です:
- カルクワッサーで蒸発補水時のベース補充+リン酸塩制御
- ツーパートでKH/Ca不足分を精密補充
- 消費量が非常に多い場合はカルシウムリアクターへの移行を検討
実践:初期設定と週次管理フロー
初回設定手順
- ベースライン測定:KH、Ca、Mgを測定(できれば同時刻に2日間計測)
- 消費速度の算出:24時間後の変化量を計算
- 添加量の設定:消費速度 × 水槽容量 = 1日の添加量
- 少量から開始:計算値の50〜70%から始め、1週間後に再測定して調整
週次チェックリスト
| 項目 | 目標値 | 測定頻度 |
|---|---|---|
| KH | 8〜11 dKH | 週2〜3回(SPS:毎日) |
| Ca | 380〜450 ppm | 週2回 |
| Mg | 1250〜1350 ppm | 週1回 |
| pH(昼間ピーク) | 8.1〜8.3 | 自動モニタリング推奨 |
まとめ:方式の選択より継続的な測定と調整が重要
カルクワッサーとツーパートのどちらが優れているかではなく、自分の水槽規模・消費量・管理スタイルに合った方式を選び、継続的に測定・調整する習慣を持つことが最も重要です。
どちらの方式でも正しく運用すれば安定したサンゴ飼育が実現できます。迷ったらまずツーパートで基本を習得し、水槽規模の拡大や管理の深化に応じてカルクワッサーやカルシウムリアクターへ移行するのが現実的なステップです。