メインコンテンツへスキップクサビライシ(Fungia)の飼育ガイド|底置きプレートコーラルの水流・照明・給餌 | ブリちょくサンゴ| ✍️ ブリちょく編集部
クサビライシ(Fungia)の飼育ガイド|底置きプレートコーラルの水流・照明・給餌
クサビライシ(Fungia sp.)はヒラサンゴ科の単体LPSサンゴで、移動能力を持つユニークな底置きプレートコーラルです。他のサンゴとの接触を避けた配置・穏やかな間接水流・ターゲット給餌のコツなど、長期飼育に必要な知識を解説します。
この記事のポイント
クサビライシ(Fungia sp.)はヒラサンゴ科の単体LPSサンゴで、移動能力を持つユニークな底置きプレートコーラルです。他のサンゴとの接触を避けた配置・穏やかな間接水流・ターゲット給餌のコツなど、長期飼育に必要な知識を解説します。
クサビライシ(Fungia)とはどんなサンゴか
クサビライシ(Fungia sp.)は、クサビライシ科(Fungiidae)に属する単体(コロニーを形成しない)のLPS(大型ポリプ石サンゴ)です。英語では「Plate Coral」または「Mushroom Coral」と呼ばれ、その名の通り円盤状・皿状の骨格が特徴的です。
クサビライシ属の最大の特徴は「移動できる」こと。多くのサンゴが基盤に固着するのに対して、クサビライシは水流や体の膨張収縮を利用して底砂の上をゆっくりと移動することができます。ひっくり返っても自力で起き上がる能力を持ち、好ましくない場所から移動して光を求める行動が観察されています。
✍️
ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
ブリちょくでサンゴを探す
認証済みブリーダーから直接購入できます
関連する出品を見る
この記事に関連するサンゴの出品をブリちょくで探してみましょう。認証済みブリーダーから直接購入できます。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 分類 | ヒラサンゴ科 Fungiidae |
| 英名 | Plate Coral, Mushroom Coral |
| 形態 | 円盤状・楕円形(直径5〜30cm) |
| ポリプ | 中型ポリプが多数(触手は長い) |
| 飼育難易度 | 初〜中級(ポリプの状態が分かりやすい) |
| 生息域 | インド洋・太平洋の礁斜面・砂地 |
カラーバリエーション:グリーン・ブラウン・パープル・ピンク・ブルー・マルチカラーと豊富で、蛍光色の発色が美しいものはコレクション価値が高い。
飼育に必要な水質パラメーター
| パラメーター | 目標値 |
|---|
| 水温 | 25〜27℃ |
| 比重(SG) | 1.024〜1.026 |
| pH | 8.1〜8.3 |
| アルカリニティ(KH) | 8〜11 dKH |
| カルシウム(Ca) | 400〜450 mg/L |
| マグネシウム(Mg) | 1,280〜1,380 mg/L |
| 硝酸塩(NO₃⁻) | 5〜20 ppm |
| リン酸塩(PO₄³⁻) | 0.02〜0.10 ppm |
注意点:超低栄養塩(ULNS)環境では退色しやすい傾向があります。適度な栄養塩(NO₃ 5〜15ppm、PO₄ 0.05ppm前後)があるほうがポリプが長く伸び、体色も映えます。
照明の選択と適正PAR値
クサビライシは水槽の底面に置かれることが多いため、上層ほど強い光は必要ありません。
| 配置場所 | PAR目安 | 状態の目安 |
|---|
| 水槽底面(弱光域) | 50〜100 μmol/m²/s | 標準的な飼育域 |
| 水槽中段 | 100〜200 μmol/m²/s | 発色向上を狙う場合 |
| 水槽上層 | 200 μmol/m²/s以上 | 光慣らし後のみ(急激は禁止) |
光慣らし(アクリメーション):購入直後は必ず弱い光の場所から始め、2〜3週間かけて徐々に光量を増やします。急激な光変化はポリプの退縮・白化(フォトストレス)を引き起こします。
照射時間:8〜10時間/日。ブルー系スペクトルを多めにすると蛍光発色が引き立ちます。
水流の設計(最重要ポイント)
クサビライシにとって水流は非常に重要ですが、強すぎる直流はポリプを閉じさせる原因になります。
推奨される水流の特徴:
- 穏やかな間接水流(ランダムな揺れ)
- ポリプが「なびく」程度の強さ
- 360°どの方向からも弱い流れが当たるマルチポイント水流
水流不足のサイン:
- ポリプの下(骨格周辺)にデトリタス(汚れ)が溜まる
- 組織が茶色くなる・ポリプが縮む
- スイーパー触手が伸びなくなる
強すぎる水流のサイン:
- ポリプが常に閉じている
- ポリプが流れに向かって縮む
- 触手がちぎれる・傷つく
移動能力があるため、クサビライシ自身が好む場所を探して移動することがあります。邪魔をせず、他のサンゴへの接触に注意しながら見守りましょう。
水槽内での配置と他サンゴとの距離
クサビライシはスイーパー触手(夜間や刺激を受けたときに長く伸びる特殊触手)を持ちます。このスイーパー触手は近くのサンゴを刺傷させることがあります。
配置のルール:
- 移動する可能性を考慮して、周囲15〜20cmは他のサンゴを置かない
- 特に刺傷に弱いLPS(トランペットコーラル・ハナタツ系)との混在には注意
- 底砂エリアを広めに確保し、移動の妨げにならないようにする
ひっくり返ったとき:逆さになっても5〜10分程度で自力で起き上がることが多いです。数時間経っても起き上がれない場合は手で優しく直してあげます。ただし水流の強い場所ではひっくり返りやすいため、配置場所を見直しましょう。
ターゲット給餌(target feeding)
クサビライシは光合成(共生褐虫藻)だけでなく、有機物の直接摂食によっても成長します。定期的なターゲット給餌が長期育成に非常に効果的です。
給餌スケジュール:週2〜3回が目安(毎日でも可だが水質管理に注意)
| 餌の種類 | 特徴 | 給餌方法 |
|---|
| 冷凍ブラインシュリンプ | 嗜好性高い・定番 | スポイトで直接ポリプに流す |
| 冷凍ミジンコ | 小さくポリプで捕食しやすい | スポイト給餌 |
| 細かく刻んだクリル | 栄養価高い | ピンセットかスポイト |
| 液体コーラルフード | 栄養補助として | 水流を止めて全体に拡散 |
給餌の手順:
1. ポリプが開いて触手が伸びた状態(通常は夜間〜消灯後が多い)を確認
2. 水流ポンプを切るか最弱にする(餌が流されない環境を作る)
3. スポイトで少量の餌をポリプの上からゆっくり落とす
4. 10〜20分後に水流を再開する(食べ残しを流す)
よくあるトラブルと対処
ポリプが閉じたまま(数日以上)
- 水流が強すぎる → サーキュレーター出力を下げる・向きを変える
- 光が強すぎる(フォトストレス) → より低光量エリアへ移動
- 水質悪化 → KH・アンモニア・硝酸塩を測定
組織が白くなる(白化)
- 強光・急激な光変化 → 低光量の場所で回復を待つ
- 水温が高い(28℃超) → 冷却対策
- KH・Ca・Mg のバランス崩壊 → 各パラメーターを再確認
組織が溶ける・剥離する
まとめ:ユニークな底置きサンゴの魅力
クサビライシは移動する唯一無二の行動特性と、豊富な発色バリエーションが魅力のLPSサンゴです。強光・強水流を避け、定期的なターゲット給餌を続けることで着実に成長します。
水槽内をゆっくりと移動しながら最適な場所を探すその姿は、まるで意思を持った生き物のようで、リーフタンクに新しい観察の楽しみをもたらしてくれます。ソフトコーラルに慣れてきたサンゴ愛好家の次のステップとしても最適な種です。