メインコンテンツへスキップ猫公開: / 更新: | ✍️ ブリちょく編集部
猫の伝染性腹膜炎(FIP)完全ガイド|原因・症状・最新治療・予防
猫の伝染性腹膜炎(FIP)の原因・症状・診断・最新治療選択肢について解説。かつて「不治の病」とされたFIPに関する現在の知識と対処法を紹介します。猫の伝染性腹膜炎(FIP:Feline Infectious Peritonitis)は、長い間「発症したら助からない病気」として知られてきた深刻な疾患です。
この記事のポイント
猫の伝染性腹膜炎(FIP)の原因・症状・診断・最新治療選択肢について解説。かつて「不治の病」とされたFIPに関する現在の知識と対処法を紹介します。猫の伝染性腹膜炎(FIP:Feline Infectious Peritonitis)は、長い間「発症したら助からない病気」として知られてきた深刻な疾患です。
※本記事はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト・楽天アフィリエイト)を含みます
猫の伝染性腹膜炎(FIP:Feline Infectious Peritonitis)は、長い間「発症したら助からない病気」として知られてきた深刻な疾患です。しかし、近年の抗ウイルス薬の研究・実用化により、治療の選択肢は大きく変わりつつあります。この記事では、FIPの基礎知識から症状・診断・最新の治療情報・予防まで、飼い主として知っておくべき内容を2026年時点の情報でまとめます。
注意事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的なアドバイスの代替にはなりません。愛猫の症状については必ず獣医師に相談してください。また、FIPの治療に関する情報は急速に進化しており、最新情報は担当獣医師に確認することを強く推奨します。
FIPとは何か
FIPは、「猫コロナウイルス(FCoV:Feline Coronavirus)」の変異によって引き起こされる致命的な疾患です。人に感染する新型コロナウイルスとは別系統のウイルスであり、猫から人へ、あるいは人から猫へうつるものではありません。
猫コロナウイルスとFIPの関係
猫コロナウイルス(FCoV)自体は猫の間で非常に広く感染しており、特に多頭飼育環境では多くの猫が保有しています。この「腸管型コロナウイルス(FECV)」は通常、軽い下痢症状を引き起こすか、ほとんど症状のない無害な感染にとどまります。
✍️
ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
ブリちょくで猫を探す
認証済みブリーダーから直接購入できます
関連する出品を見る
この記事に関連する猫の出品をブリちょくで探してみましょう。認証済みブリーダーから直接購入できます。
ペットライフ
ペット可物件・ブリーダー直販・ペット可スポットの3軸連携。
問題は、このFCoVがウイルス自身の変異によって「FIP変異株(FIPV)」に変化したときです。FIPVは本来のウイルスと異なり、免疫細胞(マクロファージ)の中で増殖できるようになります。この変異が起きた個体では、免疫系がウイルスに対して過剰反応し、全身の組織に炎症を引き起こすFIPが発症します。
- FCoVの感染≠FIPの発症(多くの感染猫はFIPを発症しない)
- 変異がなぜ特定の個体で起きるかはまだ完全には解明されていない
- 遺伝的素因・免疫状態・ストレス・年齢などが関与すると考えられている
発症しやすい条件
FIPの発症リスクが高いとされる条件は次の通りです。
品種そのものがFIPを引き起こすわけではなく、あくまで統計的な傾向にすぎません。迎える猫種を決めるときは、FIPだけでなく品種特有の遺伝性疾患も含めて総合的に情報収集することが大切です。
FIPの症状と型
FIPには大きく「滲出型(ウェット型)」と「非滲出型(ドライ型)」の2種類があり、症状が異なります。
滲出型(ウェット型)FIP
最も診断されやすいタイプで、FIP全体の約75%を占めます。
- 腹水: お腹が膨れる(最も典型的な症状)。腹腔内に黄色い粘性の液体が溜まる
- 胸水: 胸腔に液体が溜まり、呼吸困難・開口呼吸が見られることがある
- 発熱: 抗生物質に反応しない持続的な発熱
- 食欲不振・体重減少
- 元気消失
- 黄疸(おうだん): 皮膚・目の白目・歯肉が黄色くなる(肝臓への影響)
非滲出型(ドライ型)FIP
液体の貯留が目立たず、症状がより多様で診断が難しいタイプです。
- 神経症状: ふらつき・けいれん・斜頸(首が傾く)・眼振(目が揺れる)
- 眼症状: ブドウ膜炎・前房出血(目の中が赤くなる)・網膜剥離
- 腎臓・肝臓への影響: 腹腔内の臓器に肉芽腫(炎症性のしこり)ができる
- 発熱・食欲不振・体重減少(滲出型と共通)
猫エイズ(猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症)と症状が混同されることがありますが、FIVは主に喧嘩による咬傷から感染する別のウイルス性疾患であり、FIPとは原因も経過も異なります。両者を混同せず、それぞれ独立した病気として理解しておくと診断時に慌てずに済みます。
診断の方法
FIPの確定診断は非常に難しく、単一の検査で「FIPと確定」できるものは限られています。
血液検査
- 高グロブリン血症: 血液中のグロブリンという免疫タンパクが著しく高い
- 貧血: 慢性炎症に伴う軽〜中程度の貧血
- アルブミン低下: アルブミン(A)とグロブリン(G)の比(A/G比)が低くなる(0.4以下はFIPを強く示唆)
- FCoV抗体価: FCoVへの抗体を測定するが、高くてもFIPとは限らず、確定診断には使えない
腹水・胸水の検査
- 外観: 黄色〜麦わら色で、粘り気の強い液体(卵白に似る)
- タンパク量: 非常に高い(3.5g/dL以上)
- リバルタ試験: 薄い酢酸の水溶液に液体を1滴垂らし、「くらげ状」に形を保てば陽性。陽性はFIPの疑いを強めるもののFIPだけに出るわけではなく、滴が溶けて消える陰性ならFIPの可能性は低い
PCR検査
貯留液・脳脊髄液・組織からFIPウイルスのRNA検出を行う検査です。陽性であれば診断の有力な根拠になります。
組織生検
確定診断のゴールドスタンダードは病変組織の病理検査ですが、侵襲的な検査のため全例に行われるわけではありません。実際の診療では、血液検査・画像検査・臨床症状を組み合わせた「総合判断」でFIPの疑いを固めていくケースが大半です。
治療の現状
FIPはかつて「発症したらほぼ100%致死」とされていました。しかし、2010年代後半から抗ウイルス薬の研究が急速に進み、治療の選択肢が変化しています。
抗ウイルス薬による治療
GS-441524(ニュークレオシドアナログ)
ヒトのエボラ出血熱・COVID-19治療薬として開発されたレムデシビル(プロドラッグ)が、体内で変わってできる活性代謝物です。2019年頃から猫のFIP治療に用いられ始め、多くの症例で長期的な改善・完全寛解を達成したという報告が世界各国から出ています。
海外ではオーストラリア・英国・ドイツ・中国・米国などで GS-441524 の製剤が使えるようになっていますが、日本ではFIPの治療薬として承認された動物用医薬品はまだありません(2026年10月時点)。治療を受けられるか、薬の種類・投与量・期間については必ず獣医師に相談してください。
- 早期発見・早期治療開始が予後を改善する
- 治療期間は従来84日(12週間)が目安とされてきたが、42日間でも同等の効果を示した研究があり、期間は獣医師が判断する
- 神経型・眼型は治療反応が異なることがある
- 治療費が高額になるケースがある
支持療法
抗ウイルス薬治療と並行して、症状に応じた支持療法も行われます。
- ステロイド(免疫抑制による炎症制御)
- 腹水・胸水の排液処置(呼吸困難の緩和)
- 栄養管理・食欲増進剤
予防と飼育管理
FIPを完全に予防する確実な方法はありませんが、リスクを下げるための管理は可能です。
コロナウイルス感染を減らす
FCoVの感染経路は主に糞便です。トイレの衛生管理が感染拡大の防止に直結します。
- トイレの清潔維持: 猫の数+1個以上のトイレを用意し、毎日清掃する
- 新入り猫の隔離期間: 新しい猫を迎えた際は最低2〜4週間の隔離期間を設ける
- 多頭飼育の頭数管理: 多頭飼育での過密はFCoVの感染率を高める
ストレス管理
免疫機能の低下とFIP発症リスクには関連があると考えられています。
- 安心できる生活環境の維持(隠れ場所・縄張りの確保)
- 引っ越し・新しいペット・家族の変化などの大きなストレスへの配慮
- 十分な栄養管理・定期健診(猫の健康チェックリストも参考にしてください)
ワクチン
猫コロナウイルス(FCoV)に対する経鼻ワクチンは海外にありますが、効果と危険性のバランスがはっきりせず、2020年のAAHA/AAFP猫ワクチンガイドラインでは一般には推奨されていません。日本では承認された猫のFIPワクチンはありません。かかりつけの獣医師に相談してください。
症状に気づいたら
若い猫(1〜2歳以下)が次のような症状を示した場合は、早急に動物病院を受診してください。
- お腹が急に膨れてきた
- 熱が続いている(抗生物質が効かない)
- 急に元気・食欲がなくなった
- ふらつき・けいれんなど神経症状
- 目が赤い・視力が落ちているようだ
FIPは進行が速い疾患です。「様子を見る」より早めの受診が予後を大きく左右します。子猫を迎えたばかりの時期は特に体調変化に気づきにくいため、子猫を迎えて最初の1ヶ月ガイドもあわせてチェックし、普段の様子を把握しておくと異変への気づきが早くなります。
ブリちょくで健康な子猫を迎える
ブリちょくでは、「FCoV抗体検査を実施していますか」「飼育環境は少頭数ですか」といった質問を購入前にブリーダーに直接尋ねることができます。ブリーダーからの子猫選びガイドでは、こうした事前確認のポイントをより詳しく解説しています。
アビシニアン・ラグドール・ベンガル・スコティッシュフォールドなど、品種によって注意すべき遺伝性疾患は異なりますが、健康な環境で育った子猫を迎えることは、FIPリスクの軽減にもつながります。大切な愛猫との長い時間を守るために、情報を持って選択することをお勧めします。