メインコンテンツへスキップ猫の膵炎(膵臓炎)完全ガイド|症状・診断・治療・慢性管理と再発防止 | ブリちょく猫| ✍️ ブリちょく編集部
猫の膵炎(膵臓炎)完全ガイド|症状・診断・治療・慢性管理と再発防止
猫の膵炎は犬と異なり非特異的な症状(食欲不振・嘔吐・倦怠感)で気づきにくい。fPLi検査・超音波検査による診断、輸液療法・吐き気止め・疼痛管理の治療、IBD・胆管肝炎との三者複合症例(Triaditis)の対応まで実践的に解説します。
この記事のポイント
猫の膵炎は犬と異なり非特異的な症状(食欲不振・嘔吐・倦怠感)で気づきにくい。fPLi検査・超音波検査による診断、輸液療法・吐き気止め・疼痛管理の治療、IBD・胆管肝炎との三者複合症例(Triaditis)の対応まで実践的に解説します。
猫の膵炎とは
膵炎(Pancreatitis)は膵臓の炎症性疾患で、膵臓が分泌する消化酵素(アミラーゼ・リパーゼ等)が何らかの原因で膵臓自体を消化してしまうことで起こります。
猫の膵炎は犬と異なり非常に診断が難しい疾患です。その理由は:
- 症状が非特異的で、他の消化器疾患・腎疾患・感染症と区別しにくい
- 慢性の低グレード型が多く、飼い主が気づきにくい
- 犬で有効な血清リパーゼ・アミラーゼ測定が猫では信頼性が低い
- 他の疾患(IBD・胆管肝炎)を同時に持つTriaditis(三者複合症)として現れることが多い
猫の膵炎の種類
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ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
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急性膵炎
突然発症し、重症化しやすい。脱水・黄疸・重篤な全身症状を伴うことがあります。若年〜中高齢の猫に見られます。
慢性膵炎
もっとも多いタイプ。慢性的に低グレードの炎症が続き、時折悪化を繰り返します。症状が軽微なため発見が遅れやすく、発見時には膵臓に線維化・萎縮が起きていることがあります。
シャム猫などに多いとされていますが、すべての品種で発症します。
主な症状
| 症状 | 頻度 |
|---|
| 食欲不振・食欲減少 | 非常に多い(90%以上) |
| 元気がない・嗜眠 | 多い |
| 体重減少 | 慢性型に多い |
| 嘔吐 | 50〜60%(犬ほど顕著でない) |
| 腹痛 | 猫では発見が難しい(うずくまり・触診拒否) |
| 下痢・軟便 | 一部の症例 |
| 黄疸(目・皮膚の黄色化) | 胆管肝炎合併時に見られる |
| 脱水 | 急性重症例 |
特に注意が必要なサイン:3日以上食欲がない、元気がなくぐったりしている、黄疸が見られる → 緊急受診の適応
猫の膵炎の原因
特発性(原因不明)が最多で、60〜80%を占めます。原因が特定できるケースとして:
- 感染症: 猫パルボウイルス・トキソプラズマ・ヘルペスウイルス等
- 毒物・薬物: ジクロフェナク等のNSAIDs(解熱鎮痛薬)、一部の抗生剤・化学療法薬
- 外傷: 腹部への強い衝撃
- 胆管疾患・腸疾患の波及: Triaditis(後述)
高脂肪食は犬の膵炎の主原因ですが、猫の膵炎の直接原因とは言い切れないとされています(ただし高脂肪食が慢性炎症の悪化因子になる可能性は否定できない)。
診断
fPLi(猫膵臓リパーゼ免疫反応性)検査
現在、猫の膵炎診断の最重要な血液検査です。膵臓から特異的に分泌されるリパーゼを検出します。
- Spec fPL(IDEXX): 12μg/L以上で膵炎を示唆、12μg/L以下で否定的
- SNAP fPL(IDEXX): 簡易検査(陰性/陽性判定のみ)
注意点:fPLiは感度・特異度は高いが完璧ではなく、他の症状・検査との組み合わせで判断します。
超音波検査
膵臓の腫れ・エコーの変化・周囲脂肪組織の高エコー(saponification)を確認します。膵臓の視覚化が難しい場合があり、熟練した超音波検査士が必要です。
血液化学検査
- TLI(トリプシン様免疫反応性):膵外分泌不全の評価に使用
- ALT・AST・総ビリルビン:胆管肝炎合併の評価
- BUN・クレアチニン:腎機能評価(脱水による急性腎障害を除外)
- CBC:白血球数・貧血の評価
組織検査
確定診断には膵臓の組織生検が必要ですが、侵襲的な処置のため通常は行われません。臨床症状+fPLi+超音波で診断します。
治療
輸液療法(最重要)
急性・慢性悪化例の治療の柱は静脈内輸液(点滴)です。
- 脱水補正と電解質バランスの維持
- 膵臓への血液循環の改善
- 嘔吐・食欲不振による水分損失の補填
入院点滴または自宅での皮下点滴(軽症例)が選択されます。
吐き気・嘔吐のコントロール
- マロピタント(セレニア): 猫に安全に使用できる制吐剤。嘔吐・吐き気を抑制し、食欲回復を助けます
- オンダンセトロン: セロトニン受容体拮抗剤。重症例・入院中に使用
疼痛管理
猫の膵炎は痛みを伴いますが、猫は痛みを隠す傾向があります。
- ブプレノルフィン(粘膜吸収): 猫向けオピオイド系鎮痛薬
- メタドン: 入院重症例に使用
NSAIDs(メロキシカム等)は膵炎悪化リスクがあるため原則禁忌。
栄養管理
絶食は推奨されなくなっています(2000年代以降の研究)。
猫は48時間以上絶食すると脂肪肝(肝リピドーシス)のリスクが急上昇します。消化管を使うことで腸管免疫・バリア機能を維持できるため、早期から少量ずつ食事を開始するのが現在の推奨です。
- 消化の良い低脂肪・高消化性フードから始める
- 自力採食が困難な場合は鼻腔チューブ・食道チューブによる強制給餌
- 吐き気が治まったら好物を少量から提供する
抗生剤
単純な膵炎には不要です。細菌感染が疑われる(発熱・白血球増多)場合のみ使用。
Triaditis(三者複合症)
猫特有の難しい病態です。膵炎・IBD(炎症性腸疾患)・胆管肝炎(胆管肝炎/胆管炎)が同時に存在する状態で、猫の急性・慢性消化器疾患の中でかなりの割合を占めます。
胆管・膵管・十二指腸の解剖学的構造が猫では犬と異なり(Vater乳頭が猫は単一)、十二指腸から胆管・膵管に細菌が逆流しやすいため、三者が連動して炎症を起こしやすいとされています。
Triaditis の治療は:
1. 膵炎の支持療法
2. IBD:プレドニゾロン・クロラムブシル
3. 胆管肝炎:ウルソデオキシコール酸・抗生剤
3疾患を同時管理する必要があり、内科専門医のサポートが推奨されます。
慢性管理と再発防止
食事管理
- ヒルズ i/d(消化ケア)・ロイヤルカナン消化器サポート等の処方食
- 人間の食べ物・脂肪分の多いおやつは避ける
- 少量多回食(1日3〜4回)が膵臓への一度の負担を減らします
定期検診とモニタリング
慢性膵炎の猫は3〜6ヶ月ごとの血液検査(fPLi含む)・体重測定・超音波検査が推奨されます。
悪化サインを飼い主が早期に発見するためのモニタリングポイント:
- 食事量の変化(2日以上の食欲不振)
- 嘔吐の頻度増加
- 体重減少(2週間で5%以上の減少)
- 元気の低下
ストレス管理
環境変化(引越し・新しいペットの導入・生活リズムの乱れ)がトリガーになることがあります。猫にとって安定した生活環境を提供することが慢性膵炎の管理に重要です。
まとめ
猫の膵炎は「年のせい」「食べすぎ」で片付けてしまいがちですが、適切に診断・管理することで猫のQOLを大幅に改善できます。
特に慢性型の膵炎は長期間にわたる管理が必要ですが、食事療法・定期検診・ストレス管理を継続することで、多くの猫が安定した生活を送ることが可能です。3日以上の食欲不振や元気消失が見られたら、迷わず早めに獣医師へ相談してください。