メインコンテンツへスキップ犬の甲状腺機能低下症(ハイポサイロイディズム)完全ガイド|症状・診断・レボチロキシン投与と日常ケア | ブリちょく犬| ✍️ ブリちょく編集部
犬の甲状腺機能低下症(ハイポサイロイディズム)完全ガイド|症状・診断・レボチロキシン投与と日常ケア
犬に多い甲状腺機能低下症の症状(体重増加・無気力・皮膚疾患・寒がり)、血液検査による診断、レボチロキシン(T4製剤)の投与量調整、長期管理のポイントをブリーダーと飼い主向けに解説します。犬の甲状腺機能低下症とは 甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)は、甲状腺が十分な甲状腺ホルモン(主にサイロキシン:T…
この記事のポイント
犬に多い甲状腺機能低下症の症状(体重増加・無気力・皮膚疾患・寒がり)、血液検査による診断、レボチロキシン(T4製剤)の投与量調整、長期管理のポイントをブリーダーと飼い主向けに解説します。犬の甲状腺機能低下症とは 甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)は、甲状腺が十分な甲状腺ホルモン(主にサイロキシン:T…
犬の甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)は、甲状腺が十分な甲状腺ホルモン(主にサイロキシン:T4、トリヨードサイロニン:T3)を産生・分泌できなくなる内分泌疾患です。犬において最も多く見られる内分泌疾患のひとつで、特に中型〜大型犬種に多く発症します。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する役割を担っており、その不足は体温維持・心拍数・エネルギー産生・皮膚・神経機能など多岐にわたる影響を引き起こします。
好発犬種
以下の犬種は甲状腺機能低下症になりやすい傾向があります。
✍️
ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
ブリちょくで犬を探す
認証済みブリーダーから直接購入できます
関連する出品を見る
この記事に関連する犬の出品をブリちょくで探してみましょう。認証済みブリーダーから直接購入できます。
ペットライフ
ペット可物件・ブリーダー直販・ペット可スポットの3軸連携。
コッカースパニエル発症年齢は4〜10歳が多く、若齢発症は先天性甲状腺機能低下症(稀)を示唆します。性差(雌雄による発症率の違い)は比較的小さいとされています。
原因
犬の甲状腺機能低下症の95%以上は原発性(甲状腺自体の問題)であり、主な原因は以下の2つです。
リンパ球性甲状腺炎(最多)
自己免疫機序によりリンパ球が甲状腺に浸潤し、甲状腺組織が破壊されます。遺伝的素因が関与すると考えられています。
特発性甲状腺萎縮
甲状腺実質が脂肪組織に置換される変化で、明確な炎症を伴わず機能が徐々に低下します。
その他:甲状腺腫瘍・外科的切除・放射性ヨード治療後なども原因になります。
主な症状
甲状腺ホルモン不足は代謝全体に影響するため、症状は多様で慢性的に進行します。
代謝・体重関連
| 症状 | 特徴 |
|---|
| 体重増加 | 食事量に変化がないのに体重が増える(水太りではなく脂肪増加) |
| 活動低下・嗜眠 | 散歩を嫌がる・一日中眠っている・遊びへの興味が低下 |
| 寒がり | 暖かい場所に集まる・冬でも震えやすい(体温が低め) |
| 脈が遅い | 安静時心拍数の低下 |
皮膚・被毛関連
皮膚症状は飼い主が最初に気づく変化であることが多いです。
- 脱毛(対称性): 体の両側に対称的に毛が薄くなる。主に体幹・尾(ラットテール)・耳介・鼻梁
- 被毛の変化: 毛が細くなる・抜けやすい・光沢がなくなる
- 皮膚の肥厚: 皮膚が厚く、触ると革のような感触(粘液水腫)
- 反復する皮膚感染: 細菌性膿皮症・マラセチア性皮膚炎の再発
- 色素沈着: 脱毛した皮膚が黒ずむ(色素過沈着)
神経・筋肉関連(重症例)
- 顔面神経麻痺
- 前庭疾患様症状(頭部傾斜・眼振)
- 末梢神経障害(後肢のふらつき・歩行困難)
- ミオパチー(筋力低下)
診断
血液検査
TT4(総サイロキシン濃度)
最初のスクリーニングとして使われます。基準値以下の場合、機能低下が疑われますが、他の疾患・薬剤投与でも低下するため(Non-thyroidal illness syndrome/euthyroid sick syndrome)、この値だけで確定診断はしません。
fT4(遊離サイロキシン)
タンパク結合の影響を受けないため、TT4より特異度が高い。TT4と組み合わせて評価します。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
脳下垂体から分泌され、甲状腺を刺激するホルモン。甲状腺機能が低下すると、フィードバックによりTSHが上昇します。fT4が低くTSHが高い場合、原発性甲状腺機能低下症の確定診断に近づきます。
確定診断基準:
- fT4低値 + TSH高値 → 原発性甲状腺機能低下症として診断
鑑別が必要な疾患
| 疾患 | 鑑別ポイント |
|---|
| クッシング症候群 | 多飲多尿・腹部膨満。ACTH刺激試験・デキサメタゾン抑制試験で鑑別 |
| 糖尿病 | 多飲多尿・糖尿。血糖値・尿糖で鑑別 |
| 皮膚疾患(アレルギー等) | 甲状腺ホルモン正常 |
| 心疾患 | 心拍数低下のみ(他の症状なし) |
治療:レボチロキシン(L-T4)投与
犬の甲状腺機能低下症の標準治療は合成甲状腺ホルモン(レボチロキシンナトリウム:L-T4)の経口投与です。
初期投与量
0.02mg/kg(体重)を1日2回経口投与が一般的な開始量です。
- 例:10kg犬 → 0.2mg/回を1日2回
- 例:30kg犬 → 0.6mg/回を1日2回
空腹時(食事1〜2時間前)の投与が吸収率を高めます。ただし食事との一貫した関係(毎回食前または食後に揃える)が重要です。
効果の確認
投与開始後:
- 4〜8週で再検査(TT4またはfT4 + TSH)
- 投与4〜6時間後のピーク時採血が推奨
- 目標値:TT4が基準値の中〜高値域
投与量調整
- fT4が高すぎる(甲状腺機能亢進症様症状:体重減少・頻脈・過活動)→ 減量
- 症状改善不十分・fT4が低い → 増量または投与頻度を1日1回→2回に変更
レボチロキシンは一生涯の投与が必要です。自己判断での投与中止は症状再発を招きます。
治療で改善する症状・改善しない症状
| 改善しやすい | 改善に時間がかかる/しない |
|---|
| 活動性・元気さ | 神経症状(末梢神経障害)は数ヶ月かかることも |
| 体重 | 一部の皮膚変化 |
| 被毛の質 | 完全には戻らないことがある |
| 皮膚感染の繰り返し | |
日常管理とブリーダーへのアドバイス
定期検診
治療開始後安定した後も6ヶ月ごとの血液検査が推奨されます。加齢とともに投与量の調整が必要になることがあります。
体重管理
甲状腺機能低下症は体重増加を引き起こすため、治療と並行して食事量のコントロールが必要です。高繊維・低カロリーの食事を基本にし、週1回の体重測定で変化を追いましょう。
ブリーダーとして注意する点
甲状腺機能低下症には遺伝的素因があるため、好発犬種のブリーダーは以下を心がけてください。
- 繁殖前の甲状腺スクリーニング: OFAでは甲状腺パネル検査の認定制度があります。繁殖犬の甲状腺状態を把握することが重要です
- 親犬の病歴開示: 購入者に親犬の健康歴を開示し、定期健診の重要性を伝える
- リンパ球性甲状腺炎の遺伝リスク: 確認済み罹患犬の血統から繁殖候補を外す判断も必要
まとめ
犬の甲状腺機能低下症は、早期発見・適切な治療で生活の質を大幅に改善できる疾患です。中高齢になって元気がない・太りやすくなったと感じたら、まず甲状腺ホルモン検査を検討してください。
レボチロキシンは一生涯の投与になりますが、適切に管理すれば犬は通常の生活を送ることができます。定期的な血液検査と体重管理を継続しながら、愛犬のQOL維持に努めましょう。