猫のがん・悪性腫瘍ガイド|リンパ腫・扁平上皮がん・乳腺腫瘍の早期発見と治療
高齢猫に増える悪性腫瘍(がん)の主要種類(リンパ腫・扁平上皮がん・乳腺腫瘍・肥満細胞腫)の症状・発生部位・治療選択肢を解説。自宅でできる月次チェック、年2回の定期健診で確認すべき検査、早期避妊手術と乳腺腫瘍リスクの関係、がん告知後の緩和ケアの考え方まで、猫のがんに備えるための実践ガイドです。

この記事のポイント
高齢猫に増える悪性腫瘍(がん)の主要種類(リンパ腫・扁平上皮がん・乳腺腫瘍・肥満細胞腫)の症状・発生部位・治療選択肢を解説。自宅でできる月次チェック、年2回の定期健診で確認すべき検査、早期避妊手術と乳腺腫瘍リスクの関係、がん告知後の緩和ケアの考え方まで、猫のがんに備えるための実践ガイドです。
猫のがん(悪性腫瘍):増加する高齢猫の大きな課題
医療の進歩と室内飼育の普及により、猫の平均寿命は15〜16歳まで延びています。しかしその反面、がん(悪性腫瘍)は高齢猫の死因の上位に位置し、10歳を超えた猫の約30〜40%は何らかのがんを経験すると言われています。早期発見と適切な治療が、猫の生活の質(QOL)と予後を大きく左右します。
猫に多い悪性腫瘍の種類
リンパ腫(リンパ管腫)
猫の最も多いがんの一つです。リンパ節・腸管・縦隔(胸部)・腎臓・脾臓等に発生します。
主な病型
| 病型 | 発生部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 消化器型(小細胞性) | 腸管 | 最も多い。体重減少・嘔吐・下痢が主症状。高齢猫で多発 |
| 縦隔型 | 胸腺 | 若い猫に多い。FeLV(猫白血病ウイルス)関連が多い |
| 多中心型 | リンパ節全体 | リンパ節の腫大が全身に及ぶ |
| 腎型 | 腎臓 | 多飲・多尿・腎不全症状が先行することもある |
治療:多剤化学療法(COP・CHOPプロトコル)です。消化器型小細胞性リンパ腫はクロランブシル+プレドニゾロン経口投与で長期寛解が期待できます(中央生存期間1.5〜2年)。
扁平上皮がん(SCC:Squamous Cell Carcinoma)
猫で2番目に多い悪性腫瘍です。口腔(舌・歯肉)・鼻腔・皮膚(特に白毛部位の耳先・鼻・まぶた)に発生します。
特徴
サイン:口臭の悪化・食欲低下・流涎(よだれ)・顔の腫れ・口をこすりつける行動
対策:白毛猫は定期的に耳先・鼻・まぶたを確認しましょう。怪しい病変は早めに生検を受けましょう。日光の当たる場所への長時間露出を避けましょう(室内飼育の徹底)。
乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍の約85〜90%が悪性です(犬では50%以下)。未避妊のメス猫、特に初回発情前に避妊手術を受けていない猫に多発します。
特徴
- 腹部の乳腺(4対8か所)に硬いしこりが生じる
- 転移が早く(肺・リンパ節)、切除後の再発率が高い
- 早期発見・早期切除が唯一の根治手段
サイン:お腹・脇の下付近に硬いしこり、発赤・破裂(潰瘍化)
対策:生後6ヶ月以内の早期避妊手術が乳腺腫瘍リスクを86〜91%低下させると報告されています。月1回の乳腺触診(グルーミング時に習慣化)が早期発見に有効です。
肥満細胞腫(MCT:Mast Cell Tumor)
皮膚・脾臓に発生する腫瘍です。猫の皮膚腫瘍の中では一般的で、犬よりは良性の経過をたどることが多いです。
皮膚型:頭頸部・耳介に多いです。比較的良性で外科切除による根治率が高いです。
内臓型(脾臓):嘔吐・食欲不振・体重減少。脾臓摘出で症状が改善することが多いです。
骨肉腫
猫では犬より少ないが、四肢・頭部に発生することがあります。跛行(跛行)・腫れ・疼痛が初期サインです。
がんの早期発見のために
定期健診(シニア期は年2回以上)
7歳以上の猫は年2回以上の定期健診を推奨します。
がん発見に有効な検査
| 検査 | 目的 | 頻度 |
|---|---|---|
| 身体検査(触診) | リンパ節腫大・腹部腫瘤 | 毎回 |
| 血液検査(CBC+生化学) | 貧血・白血球増多・臓器異常 | 年2回 |
| 胸部X線 | 肺転移・縦隔腫瘤 | 年1回〜 |
| 腹部超音波 | 腸管・脾臓・肝臓・腎臓 | 年1回〜 |
| 尿検査 | 腎臓・泌尿器系 | 年2回 |
自宅でできる月次チェック
- 乳腺触診(未避妊メス・10歳以上のメスは特に)
- 口腔確認:口臭の変化・粘膜の色・潰瘍
- 体重測定:前月比3%以上の変化で受診
- 体表全体の触診:しこり・コリコリした硬さがないか
治療の選択肢
外科手術
最も根治性が高い治療法です。固形腫瘍の早期では第一選択です。
化学療法(抗がん剤)
リンパ腫・白血病などに使用します。猫は犬より化学療法の副作用(嘔吐・脱毛・骨髄抑制)が少ない傾向があります。
放射線療法
鼻腔腫瘍・脳腫瘍などに使用します。設備のある専門施設が必要です。
緩和ケア・ホスピス
治癒が難しい場合は、疼痛管理・食欲維持・QOL向上を優先した緩和ケアが選択肢になります。
告知された後にできること
がんの診断は飼い主にとって大きなショックですが、早期発見・早期治療によって長く質の高い生活を続けられる猫も多くいます。日常のスキンシップと年2回の定期健診が、愛猫の命を守る最大の予防策です。