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オオエンマハンミョウの飼育ガイド|採集・飼育環境・餌・繁殖
アフリカ南部に分布する世界最大級のハンミョウ「オオエンマハンミョウ」の飼育方法を徹底解説。採集シーズン・生息地・飼育ケース・土の設置・餌の種類と与え方・産卵・幼虫の育て方まで、この希少な昆虫を飼育したい方に向けた完全ガイドです。
この記事のポイント
アフリカ南部に分布する世界最大級のハンミョウ「オオエンマハンミョウ」の飼育方法を徹底解説。採集シーズン・生息地・飼育ケース・土の設置・餌の種類と与え方・産卵・幼虫の育て方まで、この希少な昆虫を飼育したい方に向けた完全ガイドです。
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オオエンマハンミョウとは
オオエンマハンミョウ(Manticora 属)はアフリカ南部に分布する世界最大級のハンミョウで、体長約60mm(6cm)に達します。全身が黒色で、上翅は左右が癒合して飛ぶことができず、「道教え虫」とも呼ばれる日本のナミハンミョウ(約20mm)よりはるかに大柄で迫力があります。
分布と生息地
オオエンマハンミョウはアフリカ南部の乾燥した砂質地に生息し、日本には分布しません。地表を歩き回り、触角でにおいをたどって獲物を探し、バッタ・コオロギ・シロアリなど地上の昆虫を捕らえます。
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ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
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活動する時間帯は、資料によって見解が分かれます。夜行性とする文献がある一方、南アフリカで約20年にわたり野外と飼育下で観察した報告(Oberprieler & Arndt 2000)は、主に早朝と夕方に活動し、夜行性ではないとしています。
- 砂礫質の開けた地面
- 砂質の土壌の草原や疎林
- 砂利道の路肩など、草の少ない裸地(幼虫の巣穴が見つかることがある)
分類・基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|
| 学名 | Manticora 属(M. latipennis など) |
| 英名 | Manticora(giant African tiger beetle など) |
| 体長 | 約40〜60mm(種による) |
| 成虫の活動時間 | 資料により見解が分かれる(夜行性とする文献と、早朝と夕方に活動するという観察報告がある) |
| 成虫の越冬 | 夏の終わりに巣穴を閉じて土の深くで休眠し、まとまった雨のあとに出てくる |
| 幼虫越冬 | 冬は巣穴の入口をふさいで休眠する |
| 分布 | アフリカ南部(南アフリカ・ナミビア・モザンビーク・ジンバブエ・ボツワナなど) |
採集のポイント
採集シーズン
日本には分布しないため、国内で採集することはできません。
入手方法
日本には分布しないため、手に入れるには販売されている個体を購入することになります。購入するときは、産地や入手の経緯(輸入された個体か、飼育下で殖やした個体か)を販売者に確かめましょう。後で説明するとおり、飼育下での繁殖の例はごく少ないため、「飼育下で殖やした個体」とされている場合は、どこで殖やされたかも聞いておくと安心です。
注意: 原産地では野生個体が採集され、取引されています。入手経路の確かな個体を選んでください。
輸入の規制: 海外から生きた昆虫を輸入するときは、植物防疫法の規制の対象になるかどうかを確かめる必要があります。植物防疫所の「生きた昆虫・微生物などの規制に関するデータベース」では、ハンミョウ科は科として「規制無」(植物防疫法の規制の対象外)と表示されます。ただし、外来生物法やワシントン条約など、ほかの法律の手続きが要る場合があります。また、土は植物防疫法で輸入が禁止されている物に当たるため、原産地の土ごと持ち込むことはできません。自分で輸入する場合は、事前に最寄りの植物防疫所に問い合わせてください(データベースで判断がつかない種は、植物防疫所に照会して判定を受けるよう案内されています)。
飼育環境の作り方
飼育ケース
成虫も幼虫も、土に深い巣穴を掘ります。研究者の飼育では、成虫は石の下から斜めに約30cmのトンネルを掘り、夜や暑い時間帯はその中で温度に合わせて深さを変えていました。幼虫の巣穴は、ほかのハンミョウのようなまっすぐな縦穴ではなく、曲がりながら斜めに深く伸びます。野外の終齢幼虫の巣穴は深さ20〜30cm・長さ40〜60cmほどで、場所によっては深さ1m近くに達します。
このため、砂質の土をできるだけ厚く入れられる、大きく深い容器が必要です。論文の飼育では、成虫を幅120cm・奥行40cm・深さ40cmのガラス水槽で飼っていましたが、著者はそれでも土の中の温度と湿度を再現するには大きさも深さも足りなかったとしています。
- 成虫飼育:底面が広く、砂質の土を厚く入れられる容器。石・枯れ木・草の株など、下にもぐれる隠れ場所を置く
- 幼虫飼育:1匹ずつ深い容器で(研究者は、初めは口を切って底に水抜き穴をあけた2Lのペットボトル、3齢からは深さ50cmの金属缶で育てていた)
底砂・土の選び方
細目〜中目の砂(河川砂・山砂)を使用します。市販の"昆虫用土"より自然の砂に近いものが適しています。
- 清潔な川砂(水洗い済み)
- 赤玉土の小粒と砂の混合(保湿性と排水性のバランス)
成虫は湿った砂に大あごをかみ入れて水を飲みます。常に湿らせ続ける必要はありませんが、乾いた日が続くときは土の一部を湿らせ、乾燥しすぎず、過湿にならないよう管理します。
温度・湿度
- 温度:飼育の適温を示した資料は見当たりません。原産地では、成虫は朝夕に巣穴の入口で日に当たって体を温め、暑い日中や夜は巣穴の深さを変えて温度を選んでいます。土を深く入れて土の中に温度の差ができるようにし、極端な高温・低温を避けてください
- 湿度:論文の飼育では、水は乾いた時期が長く続いたときに与え、いつも与えていたわけではありませんでした。強い雨が当たらないようにし、土が乾ききったら湿らせる程度にします
- 日光:論文の飼育では、容器を屋外に置き、朝と午後は日が当たって正午は日陰になるようにしていました。室内なら、夏の直射日光で容器の中が高温にならないようにします
冬越し
原産地は南半球で、季節は日本と逆になります。成虫は夏の終わりに巣穴の入口をしっかり閉じ、土の深くにもぐって休眠し、まとまった雨で土が湿るまで出てきません。研究者の飼育では、この休眠を3〜4回くり返した個体もいましたが、多くは休眠中か休眠明けの直後に死んでおり、餌を食べない期間が長い休眠は、もっとも危うい時期と考えられています。成虫の寿命ははっきりしていません。
餌の与え方
成虫の餌
オオエンマハンミョウは肉食性で、野生ではバッタ・コオロギ・シロアリ・コガネムシの仲間・ガの幼虫など、地上を歩く植物食の昆虫を主に食べると考えられています。目で獲物を見つけるのではなく、触角でにおいをたどって探します。研究者の飼育では、クモ・サソリ・トカゲ・ヤスデ・カタツムリには反応せず、硬いゴミムシダマシの成虫は噛み砕けずに放していました。飼育下では以下の餌が使いやすいです:
- コオロギ:もっとも強く反応する餌のひとつ
- ミルワーム
- バッタ(農薬のかかっていない場所で採集したもの)
- ガの幼虫・コガネムシの幼虫:見つければ食べるが、追いかけるほどの反応は弱い
土にもぐった餌は追わないため、もぐりにくい餌を与えます。食べ切れる量を与え、食べ残しはすぐ除去します。
幼虫の餌
幼虫は巣穴の入口で待ち伏せし、近くを通った昆虫に後ろ向きにすばやく飛びかかって捕らえ、巣穴に引き込みます。獲物は目で動きを見て見つけ、巣穴に引き込めない大きすぎる獲物は無視します。研究者の飼育では、大きな幼虫はコオロギ・バッタ・シロアリ・ゴキブリ・コガネムシの幼虫・ミルワーム・ガの幼虫などを、小さな幼虫はシロアリ・小さなコオロギ・小さなゴキブリ・ミルワーム・ワラジムシなどを食べました。幼虫の大きさに合った餌を、巣穴の入口のすぐ近くで動くように与えます。
繁殖・産卵
産卵
成熟したメスは地面に腹部の先を差し込み、産卵管を挿し込んで、穴ひとつに卵を1粒ずつ産みます。掘り出した卵は深さ約2cmに置かれていました。交尾のとき、オスは大あごでメスの首もとをはさんで背中に乗り、長いときは1時間ほどそのままでいますが、これは繁殖の行動でけんかではありません。
ただし、飼育下での産卵・繁殖はきわめて難しいと考えてください。約20年にわたって観察した研究者の飼育でも、M. latipennis のメスが産卵したのは長年で1回だけで、幼虫は出てきませんでした。
- 野外では、砂利道の路肩のような裸地に産卵していた
- 研究者は、原産地の砂質の土を深さ40cmの容器に入れ、屋外で自然の気候に当てて飼っていた
- 産卵しようとするメスは、ほかのオスやメスから離して飼っていた
孵化と幼虫管理
卵の期間ははっきりしていません。論文の飼育では、メスが産卵する様子が1984年12月〜1985年1月に見られましたが、1齢幼虫が現れたのは1986年4月で、その卵がいつ産まれたかは分かりませんでした。幼虫は自分で巣穴を掘ります。幼虫は3齢まであり、野外では1齢から3齢までが同じ時期にそろって見つかることから、幼虫の期間は少なくとも1年にわたると考えられています。
研究者の飼育でも、幼虫は2齢や3齢の初めまでは育ったものの、蛹になったものはありませんでした。幼虫は成虫よりも飼育環境に敏感と考えられています。
- 個別飼育(穴を掘るスペースが必要)
- ケース間での移動は極力避ける(穴を壊すとストレスになる)
- 土の霧吹きは適度に(過湿注意)
- 巣穴の入口がふさがれているのは、悪天候・脱皮・冬の休眠のときなどで、異常とは限らない。掘り返さずに様子を見る
- 野外の幼虫は冬に巣穴をふさいで休眠するが、飼育下でどのような冬越しの条件が要るかは分かっていないため、急な低温は避ける
よくある飼育トラブル
脱走する
→ フタは必須。オオエンマハンミョウは飛べないが、脱走防止に必ず閉める。目の細かいメッシュのフタを使用。
土が乾燥して幼虫が死ぬ
→ 乾いた日が続いたら土を湿らせることを忘れない。特に夏場の管理に注意。
餌を食べない・出てこない
→ 成虫は環境変化に敏感。導入直後は暗い場所で静かに管理し、1〜2日経ってから餌を与える。また、成虫は乾燥が続くときや餌が少ないときに巣穴の入口を土でふさいでこもり、土が湿ると出てくることがある。夏の終わりからは休眠に入ることもある。
まとめ
オオエンマハンミョウはアフリカ南部産の世界最大級のハンミョウで、特に存在感のある種です。飼育には以下のポイントが重要です:
- 砂質の土をできるだけ深く入れる(成虫も幼虫も深い巣穴を掘る)
- 生きた昆虫(コオロギ・ミルワームなど)を与える
- 極端な高温・低温を避け、土の深さで温度を選べるようにする。乾いた日が続いたら土を湿らせる
- フタは必須(脱走に注意)
- 幼虫は個別飼育にし、巣穴を壊さないよう静かに管理する
希少性が高く国内では採集できない種で、飼育下での繁殖の例もごく少ないため、入手するときは産地と輸入の経緯を販売者に確かめましょう。世界最大級のハンミョウの暮らしぶりを、手元でじっくり観察してみてください。