メインコンテンツへスキップサンゴ水槽のマグネシウム管理ガイド|Ca・KHとのバランスと補充方法 | ブリちょくサンゴ| ✍️ ブリちょく編集部
サンゴ水槽のマグネシウム管理ガイド|Ca・KHとのバランスと補充方法
サンゴの骨格形成に不可欠なマグネシウム(Mg)の役割、適正値1200〜1350mg/L、カルシウム(Ca)・アルカリ度(KH)との三角関係、Mgが低下する原因と補充方法(塩化マグネシウム・硫酸マグネシウム)を徹底解説します。
この記事のポイント
サンゴの骨格形成に不可欠なマグネシウム(Mg)の役割、適正値1200〜1350mg/L、カルシウム(Ca)・アルカリ度(KH)との三角関係、Mgが低下する原因と補充方法(塩化マグネシウム・硫酸マグネシウム)を徹底解説します。
マグネシウムがサンゴ水槽で果たす役割
サンゴ水槽の水質管理において「ビッグ3」と呼ばれる主要パラメータがあります。カルシウム(Ca)、アルカリ度(KH/Alkalinity)、そしてマグネシウム(Mg)です。多くの飼育者がCaとKHの管理を意識する一方、Mgを見落としがちですが、Mgはこの三角形の土台とも言える重要な役割を担っています。
骨格形成の化学反応
サンゴは体内でカルシウムと炭酸塩を結合させ、炭酸カルシウム(CaCO₃)として骨格を形成します。この化学反応において、Mgは炭酸カルシウムの沈殿を抑制する抑制剤として機能しています。
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ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
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Mgが不足すると、炭酸カルシウムが水中で自然沈殿しやすくなります。これは水槽内の「石灰質スケール」形成を促進させ、加熱ヒーターやポンプ、キャビネット内に白い結晶が積みやすくなる現象としても現れます。逆にMgが十分なレベルにあると、CaとKHが水中で安定した高濃度を維持しやすく、サンゴが必要なときに必要なだけ骨格材料を引き出せる環境が整います。
海水の自然なMg濃度
天然の海水におけるMg濃度は約1280〜1320mg/Lです。これは非常に安定した値で、サンゴが進化の過程で適応してきた基準値でもあります。飼育水槽でもこの範囲を維持することが理想とされています。
マグネシウムの適正値と測定方法
| パラメータ | 自然海水値 | 水槽管理目標値 |
|---|
| Mg | 1280〜1320 mg/L | 1200〜1350 mg/L |
| Ca | 400〜420 mg/L | 380〜450 mg/L |
| KH | 7〜8 dKH | 7〜11 dKH |
Mg測定の方法
試薬テストキット(液体滴定式)
RedSea・Salifert・Seachem等のブランドから専用Mgテストキットが販売されています。滴定式テストは精度が高く、±10〜20mg/L程度の精度で測定できます。費用対効果が高く、月1〜2回の定期測定に適しています。
ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析)
RedSea、Triton、Fauna Marin等が提供するICP分析サービスに水槽水を送ると、Mg・Ca・KH・微量元素を含む30〜70項目が一括分析されます。半年に1回程度の精密分析として利用する飼育者が増えています。
Mgが低下する原因
サンゴによる消費
SPS(小ポリプハードコーラル:ミドリイシ・コモンサンゴ等)が多く入った水槽では、骨格形成に伴いMgも少量ずつ消費されます。SPS主体の水槽では月に30〜50mg/L程度の自然低下が見られることがあります。
人工海水の品質差
使用する人工海水のブランドや製造ロットによって、混合後のMg濃度に差が生じることがあります。特に激安の人工海水はMgが低めに設定されているものがあります。新しいロットを開封したらMg濃度を確認することを習慣にしてください。
蒸発水の補充
淡水(Mg=0)で蒸発補充(ATO)を行うと、水槽全体の塩分濃度が維持される一方、Mgは水槽水の蒸発とともに徐々に希釈されることなく残り、相対的に低下する速度よりCaとKHのバランスが崩れる場合があります。特に蒸発量が多い夏場に注意が必要です。
Mg低下の症状
- 試薬測定でMg値が1200mg/L以下を示す
- CaとKHを正常値に保っているのにサンゴの成長が遅い・色が悪い
- スキマーやポンプへの石灰質スケールが以前より多い
- ミドリイシの先端がブラウニングまたは白化傾向
マグネシウムの補充方法
Mg値が低下した場合、段階的に補充します。急激な上昇(1日で100mg/L以上)はサンゴにショックを与えるため、1日あたり最大50〜100mg/Lの上昇を目安にゆっくり上げます。
塩化マグネシウム(MgCl₂)
最も一般的なMg補充剤です。粉末または液体で販売されており、水に素早く溶けます。添加量の計算は製品の使用説明に従いますが、目安として10Lあたり粉末1g=約8〜10mg/LのMg上昇(水槽サイズと比重により異なる)です。
ただし、塩化マグネシウムを多量に使用すると水槽内の塩化物イオン(Cl⁻)が増加します。過剰なCl⁻は長期的に電気的なバランスを崩す可能性があります。
硫酸マグネシウム(MgSO₄・エプソムソルト)
海水の自然なイオン比に近い組成で補充できるため、塩化マグネシウムと半々で使用する飼育者も多いです。農業用エプソムソルトは経済的に入手できますが、不純物の少ない食品グレード・水族館グレードを選ぶことを推奨します。
専用補充剤(ツーパート・バリングシステム)
RedSea Coral Pro・Fauna Marin Balling・Tropic Marin等のバリングシステムには、Ca・KH・Mgを含む三液のセットが含まれています。Mg専用液を他の液と一緒に定期的に添加することで、すべてのパラメータをバランスよく維持できます。初期費用は高いですが、手間と測定頻度を大幅に削減できます。
CaとKHとMgのバランス管理
3つのパラメータは独立して管理するのではなく、相互関係を理解した上で調整することが大切です。
| 状況 | 原因と対応 |
|---|
| Ca高・KH低 | Ca添加過多 or KH消費大。塩化カルシウム添加を一時停止してKH補充 |
| Ca低・KH高 | Ca消費大 or ソーダ灰添加過多。Ca添加を増やしKH添加を一時停止 |
| Mg低・Ca低・KH低 | 全体的な消費 or 換水不足。Mg補充後にCa・KHを段階的に調整 |
| Mg高(1500以上) | 補充過多。即時補充を停止し、換水で希釈する |
理想的な管理は毎週同じタイミングで測定し記録することです。数値の推移を見ることで、消費速度に合わせた最適な補充量が把握でき、急激な変動を防げます。
定期的なMg管理で得られる効果
正しいMg管理を行うと:
- CaとKHが安定しやすくなり、水質のブレが減る
- SPS・LPSのポリプ展開・骨格成長が改善する
- 機材への石灰スケール付着が減少しメンテナンス頻度が下がる
- 全体的なパラメータ管理が楽になる
Mgはサンゴ飼育の「縁の下の力持ち」です。CaとKHを管理しているにもかかわらずサンゴの状態が改善しない場合は、Mgの測定を行うことを強くお勧めします。