ハード(SPS)サンゴの色揚げ完全ガイド|照明・給餌・水質パラメーターで鮮やかな色彩を実現
ハード(SPS)サンゴ特にアクロポーラの鮮やかな色彩を引き出すための照明、栄養補給、水質管理を詳しく解説。色素発現のメカニズムからLA LAG成分の役割、段階的な色揚げプロセスまで実践的にガイドします。

この記事のポイント
ハード(SPS)サンゴ特にアクロポーラの鮮やかな色彩を引き出すための照明、栄養補給、水質管理を詳しく解説。色素発現のメカニズムからLA LAG成分の役割、段階的な色揚げプロセスまで実践的にガイドします。
関連品種
SPS(Small Polyp Stony)サンゴとは
SPS(Small Polyp Stony Coral)はハード(石造性)サンゴの一種で、ポリプが小さく、骨格が堅硬なのが特徴です。代表種はアクロポーラ(Acropora)で、リーフタンクの観賞価値を高める最高峰の存在です。
SPS最大の魅力は色彩の豊富さです。黄色・オレンジ・赤・青・紫など多様な色彩を持つ個体が流通しており、これらの色を「如何に引き出すか」が上級者の腕の見せ所になります。
サンゴの色素と発現メカニズム
サンゴの色は複数の色素から成る
同じアクロポーラでも、遺伝子と飼育環境で発現色が大きく異なります。
色揚げのメカニズム
- UVストレス: 弱いストレスは色素発現を促進(GFPタンパク産生)
- 高光量:光合成活性が上がり、褐虫藻が増加→緑が濃くなる
- 栄養補給:カロテノイド合成に必要なアミノ酸供給→赤系色が鮮やかに
- 水質安定:PAR・K・Ca・Mg・リン酸が最適→色が安定
段階的な色揚げプロセス
フェーズ1:基礎設定(導入後4週間)
導入直後のSPSは、輸送ストレスで色が褪せています。まずは「回復」を優先します。
照明:
- 導入当初:1日6時間・全光量40%
- 週ごとに1時間ずつ延長し、4週間後に10時間・100%へ
栄養補給:
フェーズ2:照明強化(4〜12週間)
色揚げの本格段階です。紫外線(UV-A・UV-B)が色素発現を促進します。
推奨LED照度:
- 波長 400nm(紫):全体の10%
- 波長 460nm(青):全体の40%
- 波長 660nm(赤):全体の50%
市販のサンゴ向けLEDライト(ATI Sunpower、Kessil A360Xなど)は このバランスを調整可能です。
フェーズ3:栄養調整(12週間以降)
色が出始めたら、栄養補給をさらに精密に調整します。
カロテノイドを豊富に含む給餌:
水質パラメーター
色揚げに必要な水質目安:
| パラメーター | 目標値 | 意義 |
|---|---|---|
| リン酸(PO4) | 0.05〜0.1ppm | 低いほど赤色が強調される(過度に低いと色褪せ) |
| カルシウム | 400〜450ppm | 骨格形成に必須 |
| マグネシウム | 1300〜1500ppm | Ca吸収促進 |
| カリウム | 380〜420ppm | 色素合成に関与 |
| ケイ酸 | 1〜3ppm | 微量ながら重要 |
特に、リン酸の「完全除去」志向は色揚げに悪影響を与えることが報告されています。適度な栄養保持が色彩に直結します。
よくある色揚げの失敗
失敗1:LED照度の過剰
「より高い光量 = より鮮やかな色」という誤解があります。実際には、照度過剰でサンゴが褪色(bleaching)する場合もあります。
段階的なアップスロー(段階的照度上昇)と、毎日の観察が重要です。
失敗2:栄養不足
栄養塩を完全に除去しようとする飼育者が多いですが、色揚げには適度な栄養が不可欠です。アスタキサンチンを含む給餌にシフトしましょう。
失敗3:水質の急激な変化
PAR・リン酸・Kが急激に変わると、サンゴはストレス反応で色を失います。水替え頻度・給餌量の変更は段階的に。
個体別の色揚げ戦略
赤系アクロポーラ
- LED赤色波長(660nm)を強調
- カロテノイド豊富な給餌
- やや低めのリン酸(0.05ppm前後)
青系アクロポーラ
- UV-A(365〜375nm)照射で蛍光タンパク(GFP)発現促進
- リン酸やや高め(0.08ppm)で褐虫藻活性維持
黄色系アクロポーラ
- 全光量バランス型(赤40% / 青40% / 紫20%)
- 毎日の給餌で黄色系色素(カロテノイド)を補給
まとめ
SPS色揚げは「光・栄養・水質」の三位一体で初めて成功します。単一の要素を極める(例:光量だけ)のではなく、バランスの取れた管理を心がけてください。色が出始めると、リーフタンクの美しさは劇的に向上し、その喜びは格別です。
