ハード(SPS)サンゴの色揚げ完全ガイド|照明・給餌・水質パラメーターで鮮やかな色彩を実現
ハード(SPS)サンゴ特にアクロポーラの鮮やかな色彩を引き出すための照明、栄養補給、水質管理を詳しく解説。色素発現のメカニズムから栄養塩・給餌の役割、段階的な色揚げプロセスまで実践的にガイドします。

この記事のポイント
ハード(SPS)サンゴ特にアクロポーラの鮮やかな色彩を引き出すための照明、栄養補給、水質管理を詳しく解説。色素発現のメカニズムから栄養塩・給餌の役割、段階的な色揚げプロセスまで実践的にガイドします。
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SPS(Small Polyp Stony)サンゴとは
SPS(Small Polyp Stony Coral)はハード(石造性)サンゴの一種で、ポリプが小さく、骨格が堅硬なのが特徴です。代表種はアクロポーラ(Acropora)で、リーフタンクの観賞価値を高める最高峰の存在です。
SPS最大の魅力は色彩の豊富さです。黄色・オレンジ・赤・青・紫など多様な色彩を持つ個体が流通しており、これらの色を「如何に引き出すか」が上級者の腕の見せ所になります。
サンゴの色素と発現メカニズム
サンゴの色は複数の色素から成る
- クロロフィルa(緑色):褐虫藻が光合成に用いる
- カロテノイド(黄〜赤色):光保護と栄養補給の両役
- GFP様タンパク質(蛍光タンパク):紫外線吸収・青〜赤色の二次放射
同じアクロポーラでも、遺伝子と飼育環境で発現色が大きく異なります。
色揚げのメカニズム
- 光とサンゴ自身の色素:ミドリイシ類などの蛍光タンパク(GFP様タンパク)の量は光で調節され、主に光の青い成分で増えることが研究で示されています。緑・赤の蛍光タンパクや色素タンパクは、強めの光の下で多くなります
- 光と褐虫藻:光を弱くすると褐虫藻の密度が上がることが実験で示されており、褐虫藻が増えるとサンゴは茶色っぽく見えます。強い光の下では褐虫藻が少なめになり、サンゴ自身の色素が見えやすくなりますが、急に強くしすぎると白化(褪色)の原因になります
- 栄養塩と給餌:硝酸塩などの栄養塩が多いと褐虫藻の密度が上がり、色が茶色っぽくなりやすくなります。給餌は成長を支えますが、与えすぎて栄養塩が増えないよう量を調整します
- 水質安定:PAR・K・Ca・Mg・リン酸が最適→色が安定
段階的な色揚げプロセス
フェーズ1:基礎設定(導入後4週間)
導入直後のSPSは、輸送ストレスで色が褪せています。まずは「回復」を優先します。
照明:
- 導入当初:1日6時間・全光量40%
- 週ごとに1時間ずつ延長し、4週間後に10時間・100%へ
栄養補給:
- フィトプランクトン給餌:毎日1回
- 週2回のワムシ給餌
- 不要な栄養塩制限はしない(初期段階)
フェーズ2:照明強化(4〜12週間)
色揚げの本格段階です。サンゴの蛍光タンパクは、主に光の青い成分で増えることが研究で示されています。
推奨LED照度:
- 青(460nm前後)を主体にする
- 紫(400nm前後)を加える
- 赤(660nm)は多くしない(赤い光で褐虫藻の密度やサンゴの生存率が下がったという研究がある)
市販のサンゴ向けLEDライト(Kessil A360Xなど)はスペクトルを調整できます。
フェーズ3:栄養調整(12週間以降)
色が出始めたら、栄養補給をさらに精密に調整します。
カロテノイドを豊富に含む給餌:
- スピルリナ:週2回
- アスタキサンチン含有フード:毎日
- 新鮮なワムシ・コペポーダ:毎日
水質パラメーター
色揚げに必要な水質目安:
| パラメーター | 目標値 | 意義 |
|---|---|---|
| リン酸(PO4) | 0.05〜0.1ppm | 低いほど赤色が強調される(過度に低いと色褪せ) |
| カルシウム | 400〜450ppm | 骨格形成に必須 |
| マグネシウム | 1250〜1350ppm | Ca・KHの安定維持に関わる(天然海水は約1,300ppm) |
| カリウム | 380〜420ppm | 天然海水(約400ppm)に近い値を保つ |
特に、リン酸の「完全除去」志向は色揚げに悪影響を与えることが報告されています。適度な栄養保持が色彩に直結します。
よくある色揚げの失敗
失敗1:LED照度の過剰
「より高い光量 = より鮮やかな色」という誤解があります。実際には、照度過剰でサンゴが褪色(bleaching)する場合もあります。
段階的なアップスロー(段階的照度上昇)と、毎日の観察が重要です。
失敗2:栄養不足
栄養塩を完全に除去しようとする飼育者が多いですが、色揚げには適度な栄養が不可欠です。アスタキサンチンを含む給餌にシフトしましょう。
失敗3:水質の急激な変化
PAR・リン酸・Kが急激に変わると、サンゴはストレス反応で色を失います。水替え頻度・給餌量の変更は段階的に。
個体別の色揚げ戦略
赤系アクロポーラ
- カロテノイド豊富な給餌
- やや低めのリン酸(0.05ppm前後)
青系アクロポーラ
- 青い光を主体にする(蛍光タンパクは主に光の青い成分で増える)
- リン酸やや高め(0.08ppm)で褐虫藻活性維持
黄色系アクロポーラ
- 全光量バランス型(青主体で、赤は控えめ)
- 毎日の給餌で黄色系色素(カロテノイド)を補給
まとめ
SPS色揚げは「光・栄養・水質」の三位一体で初めて成功します。単一の要素を極める(例:光量だけ)のではなく、バランスの取れた管理を心がけてください。色が出始めると、リーフタンクの美しさは劇的に向上し、その喜びは格別です。
