メインコンテンツへスキップナナフシの飼育ガイド|種類・脱皮・食草・繁殖まで初心者向けに解説 | ブリちょく昆虫| ✍️ ブリちょく編集部
ナナフシの飼育ガイド|種類・脱皮・食草・繁殖まで初心者向けに解説
擬態の達人ナナフシの飼育方法を解説。国内外産の人気種・適した食草・脱皮不全の防ぎ方・単為生殖による繁殖の特徴まで紹介します。ナナフシとは——自然界最強の擬態昆虫 ナナフシ(目:ナナフシ目 Phasmatodea)は、木の枝や葉に完璧に擬態することで知られる昆虫で、世界中に3,000種以上が確認されています。静止中…
この記事のポイント
擬態の達人ナナフシの飼育方法を解説。国内外産の人気種・適した食草・脱皮不全の防ぎ方・単為生殖による繁殖の特徴まで紹介します。ナナフシとは——自然界最強の擬態昆虫 ナナフシ(目:ナナフシ目 Phasmatodea)は、木の枝や葉に完璧に擬態することで知られる昆虫で、世界中に3,000種以上が確認されています。静止中…
ナナフシとは——自然界最強の擬態昆虫
ナナフシ(目:ナナフシ目 Phasmatodea)は、木の枝や葉に完璧に擬態することで知られる昆虫で、世界中に3,000種以上が確認されています。静止中は本物の枝と区別がつかないほど精巧な外見を持ち、観察していると「木の枝が歩き出す」という驚きを体験できます。英語では「Walking Stick(歩く枝)」と呼ばれ、その見た目の通りの名前が付けられています。
飼育のメリットは多岐にわたります。体臭がほとんどなく、鳴き声もなく、動きが穏やかなため、集合住宅でも飼育しやすい種です。必要なスペースも小さく、餌となる食草も身近な植物で賄えるケースが多い。飼育難易度が低いため、昆虫飼育の入門種として非常に適しており、子供の理科教育や昆虫観察の入り口としても人気が高まっています。
✍️
ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
ブリちょくで昆虫を探す
認証済みブリーダーから直接購入できます
関連する出品を見る
この記事に関連する昆虫の出品をブリちょくで探してみましょう。認証済みブリーダーから直接購入できます。
日本産のニホンナナフシを筆頭に、外国産のタイワンナナフシ、マレーシア産ジャイアントナナフシなど多様な種がブリーダーや専門店を通じて流通しています。
人気の飼育種と特徴
ニホンナナフシ(Ramulus mikado)
日本全国の雑木林や公園に生息する最もポピュラーな種。緑色または茶色の個体が存在し、環境に応じて体色が変化します。全個体がメスの単為生殖種で、オスはほぼ記録されていません。飼育の入門に最適で、食草の確保も比較的容易です。成体の体長は約8〜10cm。
タイワンナナフシ(Medauroidea extradentata)
外国産ナナフシの入門種として広く普及しています。コンパクトな体型で扱いやすく、アイビーやラズベリーなど入手しやすい食草で飼育できます。こちらも単為生殖が可能で、繁殖も比較的簡単。
マレーシア産ジャイアントナナフシ(Heteropteryx dilatata)
メスは全長15cm以上になる大型種で、存在感は抜群。緑色のメスに対してオスは茶色と細身の体型を持ち、同種でも性差が大きく観察の楽しみが増します。飼育難易度はやや高く、大型ケージが必要です。
コノハムシ(Phyllium spp.)
葉そのものに擬態した種で、葉脈まで再現した翅の模様は昆虫の擬態の極致といえます。飼育難易度はナナフシ目の中でも高く、専用の食草(グアバ・マンゴーの葉など)と高めの温湿度管理が必要ですが、その独特の存在感は熟練飼育者にも根強い人気があります。
ケージのセッティングと環境管理
ナナフシ飼育で最も重要な設備条件はケージの高さです。脱皮時にぶら下がりながら体を引き抜く習性があるため、ケース内の空間がナナフシの全長の3倍以上なければ脱皮不全が頻発します。たとえば全長10cmのニホンナナフシなら、最低でも高さ30cm以上のケージが必要です。余裕を持って高さ50〜60cmのケージを選ぶと安心です。
素材はメッシュケース、クリアプラスチックコンテナ、ガラスケージなど各種対応できますが、通気性の確保は必須です。湿気がこもりすぎるとカビや腐敗の原因になり、逆に乾燥しすぎると脱皮不全リスクが高まります。半面メッシュ・半面クリアパネルのケースはこのバランスを取りやすく、初心者に向いています。
湿度管理は1日1回の霧吹きが基本です。ケース側面に霧吹きし、水滴が数時間で乾く程度の量が目安。水飲み容器は不要で、ナナフシは葉や壁面の水滴から水分を摂取します。水深のある容器は溺死のリスクがあるため設置しないでください。
温度は種によって異なりますが、国産種は18〜28℃の室温で問題なく飼育できます。外国産の熱帯種は25〜30℃の維持が必要なため、冬季は爬虫類用パネルヒーターや暖房管理が必要です。
食草の選び方と管理
ナナフシは完全な植物食性で、生きた葉だけを食べます。種によって好む植物が異なるため、種に合った食草を把握しておくことが飼育成功のカギです。
ニホンナナフシ・国産種に適した食草
- バラ科の葉(サクラ・ウメ・バラ・ノイバラ)
- クズ(入手しやすいが農薬に注意)
- カシ類・コナラ
外国産種(タイワンナナフシ等)に適した食草
- アイビー(ヘデラ・ヘリックス)——通年入手できるうえ保存性が高い
- キイチゴ属の葉(ラズベリー・ブラックベリー)
- ユーカリ
食草は葉のついた枝ごと水差しに挿して提供するのが最も管理しやすい方法です。水は毎日交換し、ナナフシが水差しに落ちないよう口をスポンジや綿で塞いでください。農薬が付着した葉は中毒死を引き起こす危険があるため、採取場所には必ず注意を払い、不明な場合は水洗いを徹底するか市販の無農薬食草を使用してください。
脱皮のサポートと失敗した場合の対処
脱皮前には「食欲の低下」「動きの鈍化」「体色の変化(くすんだ色になる)」といったサインが現れます。このサインが見えたら、餌替えや霧吹き以外の不要な干渉を避け、脱皮に集中できる環境を保ちましょう。脱皮中は絶対に手を触れないことが鉄則です。一度脱皮が始まると数時間かかることもあり、途中で触れると脚や触角を損傷する危険があります。
脱皮不全(脱皮が途中で止まる・古い皮が残る)が起きた場合は、温水で湿らせた綿棒を使って、残った皮を非常に慎重に、軽く押すように補助することがあります。ただし強引に引っ張ると肢節ごと失う可能性があるため、無理は禁物です。脱皮不全が続く場合はケージの湿度が不足している可能性が高いので、霧吹きの頻度を増やして対策してください。
繁殖——単為生殖と卵の管理
ナナフシの最大の不思議のひとつが「単為生殖(parthenogenesis)」の能力です。ニホンナナフシ・タイワンナナフシなど多くの種では、オスなしでもメスが受精なしに産卵し、孵化した個体はすべてメスになります。ペア飼育が不要なため繁殖のハードルが低く、初心者でも挑戦しやすい点が人気の理由のひとつです。
産卵はケース内のどこにでも行われ、種によって卵の形状が大きく異なります。ニホンナナフシの卵は種子に似た形状で、アリが運ぶことで自然分散する「エライオソーム」という構造を持っています。産み落とされた卵は、湿らせたバーミキュライトや水苔の上に置いて保管します。過度な乾燥は孵化失敗の原因となるため、定期的な霧吹きで適度な湿度を維持してください。
孵化までの期間は種によって異なり、数ヶ月から1年以上かかるものもあります。ニホンナナフシは低温越冬させることで翌春に一斉孵化する傾向があり、秋に産まれた卵は屋外と同様に低温期を経験させると孵化率が向上します。孵化した幼虫は非常に小さく繊細なため、最初の数週間は柔らかい新芽を中心に与え、脱水と農薬に細心の注意を払ってください。
ナナフシは静かで独特の魅力を持つ生き物です。擬態という進化の神秘を日常で観察できる喜びは、昆虫飼育の醍醐味を存分に味わわせてくれます。