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ナナフシの飼育ガイド|種類・飼育環境・餌・繁殖まで徹底解説
ナナフシの基本的な飼育方法を解説。エダナナフシ・トゲナナフシなど国内種の特徴、適切なケージと餌植物、餌を切らしたときの代用と冬の管理、脱皮管理、単為生殖による繁殖と卵の回収・孵化まで、初心者にもわかりやすく紹介します。
この記事のポイント
ナナフシの基本的な飼育方法を解説。エダナナフシ・トゲナナフシなど国内種の特徴、適切なケージと餌植物、餌を切らしたときの代用と冬の管理、脱皮管理、単為生殖による繁殖と卵の回収・孵化まで、初心者にもわかりやすく紹介します。
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枝や葉に擬態した独特の姿で多くの昆虫愛好家を魅了するナナフシ。クワガタやカブトムシとはひと味違う「虫らしくない虫」の静かな佇まいと、驚くほど精巧な擬態能力は、一度飼育すると手放せない魅力があります。飼育難易度は比較的低く、スペースも取らないため、昆虫飼育の入門種としても人気が高まっています。
この記事では、ナナフシ飼育の基本から繁殖まで、実践的な情報を徹底解説します。
ナナフシとはどんな昆虫か
ナナフシ目(Phasmatodea)に属する昆虫の総称で、世界には3,000種以上が知られています。日本在来種としてはニホンナナフシ、エダナナフシ、トビナナフシなどが有名で、海外産ではインドナナフシ(Carausius morosus)、ヤエヤマナナフシなど飼育種が多数存在します。
ナナフシの特徴
- 体型: 細長い枝状の体が最大の特徴。種によっては葉の形に擬態する葉状種(コノハムシ)も存在
- サイズ: 種によって大きく異なり、小型種は5〜8cm、大型種では30cm以上になるものも
- 単為生殖: 多くの種でメスだけで繁殖できる単為生殖が可能。オスがいなくても卵を産み、孵化する
- 再生能力: 脱皮の際に失った足を再生できる
- 寿命: 孵化から死までを通して1年前後の種が多い。国内種は春に孵化して夏〜秋に成虫となり、晩秋には寿命を迎える一年サイクル。熱帯性の種にはより長く生きるものもある
日本でよく飼育される種類
ニホンナナフシ(Ramulus mikado)
日本全国に広く分布する在来種。体長8〜11cm程度で扱いやすく、入手しやすいのが特徴。クヌギやコナラ、バラ科植物を食べる。単為生殖が可能でオスは極めて稀。
エダナナフシ(Phraortes elongatus)
ニホンナナフシよりやや細身で翅がなく、ソメイヨシノやバラ科全般を好む。市街地でも見られる普及種。
インドナナフシ(Carausius morosus)
海外産ながら日本での飼育歴が長く、飼育情報が豊富な入門種。アイビー(セイヨウキヅタ)やサンザシなどを食べ、単為生殖で繁殖できるため繁殖も容易。
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ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
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コノハムシ(Phyllium属)
葉に擬態した独特の体型で高い人気を誇る。飼育には高温多湿の環境が必要で中・上級者向け。グアバ、キイチゴなどを食べる。
飼育ケースの選び方と設置
ケースの種類とサイズ
ナナフシは細長い体を持ち、脱皮の際に逆さまにぶら下がるため、高さのあるケースが必要です。
推奨ケース: 高さ30cm以上のプラスチック飼育ケースや、虫かごタイプの縦長ケース。一般的な「大プラケース」は幅は十分でも高さが足りないため、縦長の「コバエシャッタートール」や「レプタイルボックス」など高さのある容器が向いています。
目安: 成虫の体長×2〜3倍以上の高さを確保してください。例えば体長10cmのナナフシなら、最低でも高さ25〜30cmのケースが必要です。
通気性の確保
ナナフシは通気性の悪い環境で蒸れると死亡リスクが高まります。蓋や側面にメッシュ通気口があるケースか、蓋に穴を開けてガーゼや不織布を貼り付けるなど通気を確保してください。
内装の設置
- 枝や棒: 脱皮のためのとまり木として、実際に使う餌植物の枝を数本立てます
- 底材: キッチンペーパーやヤシガラマットを薄く敷く。卵を産む種は底材への産卵を好む
- 水分補給: 霧吹きでケース内壁に水滴をつけてやると、水滴を舐めて水分補給する
高さと通気を両立するガラスケースを選ぶ
脱皮のたびに逆さまにぶら下がる習性を考えると、ケースは高さを最優先に選び、幅は飼う数に合わせて決めるのが順序です。爬虫類用のガラスケースは天面が金網なので蒸れにくく、前扉から餌の枝を差し替えられるため、上から手を入れて脱皮中の個体を驚かせることがありません。体長10cm前後の種なら高さ45cmの小型サイズで足り、大型種や複数飼育なら60cm級に上げます。餌植物を生けた瓶をそのまま置ける奥行きがあるかも確認しておくと、日々の管理が楽になります。
餌植物の選び方と管理
ナナフシ飼育で最も重要なのが餌植物の確保です。種によって食べられる植物が決まっているため、事前に確認が必要です。
主な餌植物と対応種
| 種類 | 餌植物 |
|---|
| ニホンナナフシ・エダナナフシ | サクラ、ウメ、バラ、クヌギ、コナラ |
| インドナナフシ | アイビー(セイヨウキヅタ)、サンザシ、バラ、キイチゴ類 |
| トビナナフシ | クヌギ、コナラ、カシ類 |
| コノハムシ | グアバ、キイチゴ、サルトリイバラ |
餌植物の保存方法
枝ごと切ってきた餌植物は、水を入れた瓶に生けると数日〜1週間程度鮮度を保てます。ただし、ナナフシが瓶の水に落ちて溺れないよう、瓶口をティッシュやアルミホイルで塞いでください。
庭に餌植物を植えておくか、プランターで栽培しておくと安定供給できます。インドナナフシならアイビーがとても育てやすく、年間を通じて供給できます。
温度・湿度の管理
温度
国内種(ニホンナナフシ・エダナナフシ)は日本の室温で十分飼育できます。基本的には18〜28℃程度で管理してください。
ただし国内種は本来、成虫が晩秋までに寿命を迎え、冬は卵の状態で越します。室内が暖かければ成虫が年内いっぱい生きることもありますが、成虫のまま冬を越させるのが本来の飼い方ではない点に注意してください(冬の管理については後述します)。
インドナナフシなど熱帯系の種は20〜28℃が理想的で、15℃以下になると活動が鈍り、体調を崩すことがあります。
湿度
完全な乾燥は禁物ですが、多湿すぎても蒸れで死亡することがあります。1日1〜2回の霧吹きでケース内壁に水滴をつけ、水分補給と適度な湿度を保ちます。霧吹き後は通気を確保して過剰な湿気を逃がしてください。
脱皮の管理
ナナフシは成虫になるまでに数回の脱皮を繰り返します。脱皮は逆さまにぶら下がった状態で行うため、ケース内に十分な高さと、ぶら下がれる枝や壁面が必要です。
脱皮失敗を防ぐポイント
- ケースに十分な高さを確保する(最重要)
- 脱皮中は絶対に触らない・動かさない
- 湿度が低すぎると脱皮不全になりやすいため、霧吹きで適度な湿度を維持する
- 万一、脱皮不全で足が引っかかっている場合は、水で濡らした綿棒で静かに助ける
脱皮後しばらくは体が柔らかく傷つきやすいため、触れるのは完全に硬化してからにしましょう。
繁殖と卵の管理
単為生殖の仕組み
ニホンナナフシやインドナナフシなど多くの種では、メス単独で無性生殖(単為生殖)が可能です。オスがいなくても有精卵と同等の卵を産み、孵化します。これはナナフシ飼育最大の魅力のひとつで、繁殖サイクルを容易に維持できます。
産卵
成虫メスは脱皮を繰り返して成熟すると、毎日1〜数個の卵を産み始めます。卵は地面に落とすか、土や底材に潜らせて産む種もあります。卵はゴマや植物の種子に似た形状で、1〜数mmの小さなものです。
孵化管理
産まれた卵は、湿らせたバーミキュライトやヤシガラを入れた小さな容器に移して管理します。
- 湿度: バーミキュライトを適度に湿らせ、乾燥を防ぐ(過湿はカビの原因)
- 温度: 種によって異なるが、20〜26℃程度が多くの種に適している
- 孵化期間: 種によって大きく異なり、数週間〜数ヶ月かかるものも
孵化した幼虫は非常に小さく、細くて繊細です。成虫と同じ餌植物を小さくちぎって与え、乾燥しないよう丁寧に管理します。
よくあるトラブルと対処法
餌を食べない
- 餌植物の種類が合っていない可能性。種に合った餌植物を確認する
- 脱皮前は食欲が落ちる。数日様子を見る
- ケース内の温度が低すぎる場合も食欲低下の原因になる
脱皮不全
- ケースの高さ不足が最大原因。より高いケースに移す
- 湿度不足も原因。霧吹きの頻度を増やす
- 万一引っかかっている場合は、水で湿らせた綿棒で優しく助ける
共食い
- ナナフシは一般的に共食いはしないが、脱皮直後の軟体時に他の個体に踏まれて傷つくことがある
- 過密飼育は避け、脱皮が近い個体は隔離するとよい
餌を切らしたとき・季節で餌がなくなるときの対処
ナナフシ飼育でつまずきやすいのが、餌植物を安定して確保し続けることです。餌の種類そのものよりも、「切らしたときにどうするか」で飼育が続くかどうかが決まります。
冬に餌がなくなる問題は、種によって意味が変わる
国内種のニホンナナフシやエダナナフシは、本来は年に1世代のサイクルで、春に孵化して夏から秋にかけて成虫になり、晩秋には寿命を迎えます。冬を越すのは成虫ではなく卵です。つまり国内種を飼っている限り、サクラやクヌギが落葉する真冬に成虫へ与える餌を探す場面は、基本的に生じません。冬に管理する対象は卵に切り替わります。
一年を通して成虫の姿を楽しみたい場合は、常緑の餌植物で回せる熱帯性の種を選ぶことになります。インドナナフシとアイビー(セイヨウキヅタ)の組み合わせが定番なのは、アイビーが屋内でも枯れずに一年中入手・栽培できるためです。通年飼育を前提にするなら、種を決める段階でこの点を織り込んでおくと無理がありません。
餌を切らしたときの代用
同じ食草グループの中で置き換えるのが基本です。ニホンナナフシ・エダナナフシであればバラ科の範囲、たとえばサクラが手に入らないときはウメ、バラ、キイチゴ類で代用できます。クヌギ・コナラを食べる種はカシ類でしのげることがあります。
ただし、食草の切り替えは急に行わないでください。新しい葉を受け付けずに拒食することがあります。切り替えるときは古い枝と新しい枝を数日間同時に入れ、自分から移るのを待つのが確実です。
園芸店の苗・街路樹をそのまま使わない
もっとも見落とされやすい注意点です。園芸店やホームセンターで売られている苗には、浸透移行性の殺虫剤が使われている場合があります。この種の薬剤は葉の内部に取り込まれているため、水で洗っても落ちません。知らずに与えると短期間で全滅することがあります。
餌用に使うなら、無農薬と確認できるものを選ぶか、自分で種や挿し木から育てたものを使ってください。街路樹や公園の樹木も、薬剤散布の可能性に加えて、そもそも採取してよいかという問題があります。自宅の庭やプランターで餌植物を育てておくのが、結局もっとも安全で安上がりです。
幼虫には若い葉を選ぶ
孵化直後の幼虫は口が小さく、硬く育った葉をうまく食べられません。同じ植物でも枝先の新芽や展開したばかりの若葉を選んで与えてください。「餌植物は合っているのに幼虫が育たない」という場合、葉が硬すぎることが原因になっているケースがあります。
卵の回収と孵化までの実務
産卵が始まったあとの卵の扱いは、飼育を次の世代へつなぐうえで最も質問の多いところです。
卵の集め方
多くの種は卵を産み落とすだけなので、ケースの底に敷いたキッチンペーパーやヤシガラの上に転がっています。底材を薄く平らにしておくと、ゴマ粒のような卵が見つけやすくなります。毎日拾う必要はなく、週に1回まとめて回収すれば十分です。回収した卵は湿らせたバーミキュライトを入れた小容器に移します。
カビと乾燥のバランス
卵の管理で失敗する原因は、ほぼ過湿によるカビか、逆の乾燥です。バーミキュライトは握っても水が染み出さない程度にとどめ、容器は密閉せず通気を確保してください。カビが生えた卵を見つけたら、周囲に広がる前に取り除きます。
孵化しないときに待つべき期間
「数週間経っても孵化しない」という相談は多いのですが、多くの場合は異常ではありません。特に国内種の卵は、秋に産まれたものが冬を越して翌春に孵化するのが本来のサイクルです。秋に得た卵が年内に孵化しないのは正常な反応なので、途中で乾かしてしまわないことだけを守って翌春まで待ってください。
熱帯性の種は季節に縛られませんが、それでも孵化までに数か月かかるものがあります。単為生殖で産まれた卵がすべて孵化するとは限らず、孵化率は個体や保管条件によって変動します。見た目でその卵が孵るかどうかを判別する方法は実質的にないため、カビたものを取り除きながら期間で見切るのが現実的な運用です。
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