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犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の症状・グレードと手術・管理ガイド
小型犬に多い「パテラ(膝蓋骨脱臼)」の症状・グレード(1〜4)の違い、手術の必要性の判断、術後リハビリ方法、予防のための筋肉強化トレーニングまで解説します。チワワ・ポメラニアン・トイプードルの飼い主必読の情報をまとめました。
この記事のポイント
小型犬に多い「パテラ(膝蓋骨脱臼)」の症状・グレード(1〜4)の違い、手術の必要性の判断、術後リハビリ方法、予防のための筋肉強化トレーニングまで解説します。チワワ・ポメラニアン・トイプードルの飼い主必読の情報をまとめました。
パテラ(膝蓋骨脱臼)とは
パテラ(Luxating Patella)とは、膝の前面にある「膝蓋骨(しつがいこつ)」が正常な溝から内側または外側にずれる整形外科疾患です。日本ではトイプードル・チワワ・ポメラニアン・ヨークシャーテリア・マルチーズなど小型犬に非常に多く見られ、「小型犬の国民病」とも呼ばれるほど発生率が高い病気です。
原因の多くは先天的な骨格構造の問題です。大腿骨の滑車溝が浅い、脛骨稜の位置がずれているなど、骨格レベルの歪みが積み重なって発症します。生後数ヶ月〜数年で初めて症状が現れるケースが多く、成長に伴い悪化していくことがあります。後天的な要因としては肥満・激しいジャンプの繰り返し・フローリング床での生活による外傷なども関与します。
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ブリちょく編集部
生体の飼育情報を専門に扱うブリちょく編集部。獣医療・繁殖の各分野を取材し、初心者にも分かりやすい記事をお届けします。
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軽症では日常生活に支障がありませんが、放置すると関節軟骨の摩耗・前十字靭帯断裂・骨格変形へと進行し、最終的には歩行困難に至ることもあります。早期発見・早期対処が予後を大きく左右します。
グレード(重症度)の分類
パテラはグレード1〜4の4段階で重症度が分類されます。診断には触診・X線検査を組み合わせて行います。
グレード1
膝蓋骨は安静時に正常な位置にあります。指で押すとずれますが、力を抜くと自然に元の位置に戻ります。日常生活での症状はほぼなく、定期観察が基本となります。
グレード2
歩行や走行中に膝蓋骨が自然に外れることがあります。「スキップ歩き」(後ろ足を1〜2歩上げて3本足で進む動き)が代表的なサインです。自然に戻ることも多いですが、脱臼頻度が増えると筋肉・靭帯への負担が蓄積します。
グレード3
膝蓋骨が常に脱臼した状態になっています。指で押し戻すことはできますが、すぐに外れてしまいます。跛行(足を引きずる歩き方)が日常的に見られ、筋肉の萎縮も始まります。
グレード4
膝蓋骨が完全に脱臼しており、手でも正常な位置に戻せません。骨格そのものが変形し、O脚やX脚になっているケースも多く、まともな歩行が困難になります。この段階では手術を行っても完全な回復は難しいため、早期介入が何より重要です。
手術の必要性と方法
グレード2以上で日常生活への影響が出ている場合、または将来的な悪化が予測される若い犬(1〜5歳)では手術が検討されます。以下のサインが複数見られる場合は早めに専門医に相談してください。
- 跛行が繰り返し起きている
- 患部を触ると嫌がる・鳴く(痛みのサイン)
- X線で関節炎の進行や骨格変形が確認された
- 筋肉の萎縮が目立ってきた
主な手術方法は複数の術式を組み合わせて行います。「脛骨粗面転位術(TTT, Tibial Tuberosity Transposition)」で膝蓋骨が正常に追従するよう骨の位置を修正し、「滑車溝形成術(トロクリアプラスティ)」で溝を深く削り直して膝蓋骨が収まりやすくします。さらに「関節包縫縮術」で関節周囲の組織を締め直すことで再脱臼を防ぎます。
費用の目安は片足あたり15〜30万円程度で、病院・グレード・術式の組み合わせによって変動します。両足同時手術を行うケースもありますが、術後の安静管理が難しくなるため、状態に応じて時期をずらす方針を取る獣医師も多いです。
術後リハビリと日常管理
手術後は2〜4週間の厳格な安静が最優先です。この時期に無理な動きをすると骨がずれてしまうリスクがあります。
術後の基本管理
- エリザベスカラーを抜糸まで継続して着用させる
- ケージレスト(ケージ内での安静)を徹底する
- 患部への冷湿布を1日数回行い炎症を抑える(獣医師指示に従う)
生活環境の整備
フローリングは術後に限らず、パテラを持つ犬全般にとってリスクが高い環境です。廊下・リビングには滑り止めマットを敷き詰め、ソファや段差へのジャンプを禁止します。昇降にはペット用スロープを活用しましょう。肥満は関節負担を大幅に増大させるため、適正体重の維持は手術の有無に関わらず必須です。
リハビリ運動
抜糸・骨癒合の確認後(術後4〜8週目以降)から段階的にリハビリを開始します。水中トレッドミルや浅いプールでの水中ウォーキングは浮力で体重負担を軽減しながら筋肉を回復させる有効な手段です。陸上では平地での短距離ウォーキングから始め、週単位で距離・時間を延ばしていきます。
手術なしで管理できるケースとその方法
グレード1、または症状の軽いグレード2では保存療法(手術を行わない管理)で長期間安定させられることがあります。
保存療法の中心は筋肉強化です。大腿四頭筋を中心とした下肢の筋肉を鍛えることで、膝蓋骨を正常な位置に保つ補助力が生まれます。毎日の平地散歩・バランスディスクやバランスボールを使った体幹トレーニング・キャバレッティ(小さな棒を並べたコース歩行)などが効果的です。
サプリメントとしてグルコサミン・コンドロイチン・オメガ3脂肪酸(フィッシュオイル)が関節軟骨の保護に使われることがあります。ただし科学的エビデンスには個体差があるため、あくまで補助的な位置づけです。
3〜6ヶ月に1回の定期検診でグレードの変化を継続確認し、悪化の兆候があれば速やかに治療方針を見直すことが大切です。
ブリーダーから犬を迎える際のチェックポイント
パテラは遺伝的素因が強い疾患です。ブリーダーから子犬を迎える際は以下を確認しましょう。
- 親犬のパテラ検査歴:信頼できるブリーダーは親犬のグレード検査を実施しています
- JKC・OFAの繁殖基準:グレード2以上の犬を繁殖から外している繁殖者を選ぶ
- 生後45〜60日前後の獣医師診断書:引き渡し前に整形外科的チェックを受けているか確認する
- 飼育環境:フローリングへの過剰な露出・高所からのジャンプを繰り返させていないか
パテラは完全に予防できる病気ではありませんが、適切な繁殖・早期発見・継続的な管理によって犬の生活の質(QOL)を長期間高く保つことは十分に可能です。日々の歩き方の変化を見逃さず、「スキップ歩き」が気になったら早めに動物病院へ相談してください。