犬のデンタルケアの重要性と具体的な方法を解説。歯磨きの手順、歯周病の原因と症状、デンタルガムの効果、動物病院でのスケーリング、日常的なケアの習慣化まで実践的に紹介します。
この記事のポイント
犬のデンタルケアの重要性と具体的な方法を解説。歯磨きの手順、歯周病の原因と症状、デンタルガムの効果、動物病院でのスケーリング、日常的なケアの習慣化まで実践的に紹介します。
犬のデンタルケアは、多くの飼い主が見落としがちですが、犬の健康寿命を左右する非常に重要なケアです。3歳以上の犬の約80%が何らかの歯周病にかかっているとされ、歯周病は口腔内の問題にとどまらず、心臓、腎臓、肝臓などの臓器にも悪影響を及ぼす全身疾患です。
犬の口には成犬で42本の歯があります。人間と比べて犬の歯はとがった形状が多く、食物を裂いたり砕いたりするのに適しています。
歯周病は歯垢(プラーク)の蓄積から始まります。食後に歯の表面に付着した食べかすと細菌が混ざり合って歯垢を形成し、放置すると3〜5日で歯石へと変化します。歯石になると歯磨きでは除去できません。歯垢や歯石の中の細菌が歯肉に炎症を起こし(歯肉炎)、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶けていく歯周炎に発展します。
歯周病が進行すると以下のような深刻な問題を引き起こします。歯の脱落、顎の骨折(特に小型犬で多い)、口鼻瘻管(歯根の感染が鼻腔に達する)、菌血症(口腔内の細菌が血流に乗って全身に広がる)による心臓弁膜症、腎臓病、肝臓障害などです。
以下の症状が見られたら歯周病を疑い、動物病院を受診しましょう。
犬の歯磨きは毎日行うのが理想ですが、最低でも週に3回は行いましょう。
準備するもの: 犬用歯ブラシ(犬のサイズに合ったもの)、犬用歯磨きペースト(人間用は使わないでください。フッ素やキシリトールは犬に有害です)。指にはめるシリコン製のフィンガーブラシは、歯磨きが初めての犬に使いやすいです。
ステップ1 口を触ることに慣れさせる: 歯磨きの練習は、口を触ることへの抵抗感をなくすところから始めます。犬がリラックスしている時に、口の周りを優しく触ります。嫌がらずに触らせてくれたらおやつで褒めます。数日かけて、唇をめくる、歯や歯茎に指で軽く触れるまでステップアップしていきます。
ステップ2 歯磨きペーストに慣れさせる: 犬用歯磨きペーストは鶏肉味やバニラ味など犬が好む風味があります。指に少量つけて舐めさせ、味に慣れさせます。
ステップ3 ブラッシングの開始: 歯ブラシに歯磨きペーストをつけ、犬の唇を軽くめくって歯の外側(唇側)を優先的に磨きます。ブラシを歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、小さな円を描くように動かします。外側を磨くだけでも歯周病予防の効果は大きいです。内側(舌側)まで磨ければ理想的ですが、嫌がる場合は外側だけでも続けることが重要です。
ステップ4 奥歯を重点的に: 歯周病が最も起こりやすいのは上顎の奥歯(第4前臼歯と第1後臼歯)です。この部分は唾液腺の開口部に近く歯石がつきやすいため、重点的に磨きましょう。
歯磨きが主軸ですが、補助的なケアも併用すると効果的です。
デンタルガム: VOHC(獣医口腔衛生評議会)認定のデンタルガムは、咀嚼による物理的な歯垢除去効果が認められています。グリニーズ、OraVet、ベジデントなどが代表的です。ただしデンタルガムだけでは歯磨きの代わりにはなりません。あくまで補助として位置づけましょう。
デンタルリンス・スプレー: 口腔内の細菌を抑制する液体製品です。歯磨きが難しい犬や、歯磨きの間隔が空く日の補助として使えます。飲み水に混ぜるタイプもあります。
デンタルトイ: ロープのおもちゃやゴム製の噛むおもちゃは、噛むことで歯の表面を擦る効果があります。硬すぎるおもちゃ(牛の蹄、鹿の角など)は歯が折れるリスクがあるため注意が必要です。
手作り食の場合: 手作り食を与えている場合は、生の骨付き鶏の手羽先(加熱した鶏骨は裂けて危険なため生に限る)を週に1〜2回与えると、噛む動作で歯垢を除去する効果があります。ただし誤飲や消化器のトラブルのリスクもあるため、獣医師と相談の上で行ってください。
歯石が付着してしまった場合は、動物病院での歯科処置(スケーリング)が必要です。
無麻酔スケーリングの注意: 無麻酔での歯石除去を行うサロンやクリニックがありますが、獣医歯科学会は無麻酔スケーリングを推奨していません。歯の表面の歯石は取れても、最も重要な歯周ポケット内の歯石は除去できず、犬が恐怖や痛みを感じるストレスが大きいためです。
全身麻酔下のスケーリング: 全身麻酔下で超音波スケーラーを使って歯石を除去し、歯周ポケット内もキュレットで清掃します。必要に応じてレントゲンを撮影し、歯根の状態を確認します。重度の歯周病の歯は抜歯することもあります。麻酔前の血液検査で全身状態を確認し、安全性を確保した上で行われます。
費用と頻度: スケーリングの費用は30,000〜80,000円程度(全身麻酔、レントゲン含む)が一般的です。頻度は犬の口腔状態によりますが、1〜2年に1回のスケーリングが推奨される場合が多いです。毎日の歯磨きを継続すればスケーリングの頻度を減らせます。
犬種によって歯のトラブルのリスクが異なります。
小型犬(トイプードル、チワワ、ヨークシャーテリアなど)は、顎が小さいため歯が密集しやすく、歯周病のリスクが高い犬種群です。乳歯遺残(乳歯が抜けずに永久歯と同時に存在する状態)も小型犬に多く、乳歯が残っていると歯石が溜まりやすくなるため、生後7か月を過ぎても抜けない乳歯は獣医師に相談しましょう。
短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)は歯並びが悪く、歯の重なりが多いため歯垢が溜まりやすい特徴があります。
犬の歯の健康は遺伝的な要素も関与します。ブリちょくでは、歯の健康にも配慮して繁殖しているブリーダーから子犬を直接迎えられます。デンタルケアの始め方や、その犬種に合ったケア方法についてもブリーダーに相談できます。