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基礎母系の作り方|1頭の牝から系統を立てるまでをブリーダー向けに解説
基礎母系母系繁殖計画
系統を立てるとき、起点になるのは牡ではなく1頭の牝です。良い牡は借りられますが、牝は借りられません。この非対称が、繁殖計画のほぼすべてを規定します。
なぜ牝から立てるのか
理由は3つあり、性質がそれぞれ違います。
1. 生物学的な理由:1頭の牝から取れる産次は限られる一方、牡は同じ期間に多数の牝と交配できます。系統が前に進む速度を決めているのは牝の側です。
2. 制度的な理由:JKC の一胎子登録では、繁殖者は母犬の所有者です。子犬の犬名に付く犬舎名も母犬の所有者が登録したものが乗るため、血統書の上で犬舎の名前を残していくのは牝の系列です。牡をいくら使っても、その犬舎名は自分の子犬には付きません。
3. 制度上の上限:母犬が生涯に持てる産次には上限があります。JKC は2022年6月以降の交配分から、繁殖者が動物取扱業者であるかどうかにかかわりなく、すべての一胎子登録における母犬の条件を「出産回数6回以内」「交配時の年齢6歳以下(7歳時点で出産回数6回未満なら7歳以下)」と定めており、申請時の審査で満たしていなければ申請は返却されます。
同じ数値は令和三年環境省令第七号にもありますが、そちらの条文の対象は販売業者・貸出業者・展示業者です(ブリーダーの数値規制)。業として繁殖していなくても JKC の登録条件は課されるため、「自分は業者ではないから上限は関係ない」という理解は誤りです。
基礎牝を選ぶときに見る点
見るべきはその牝の出来そのものより、後ろにある系統です。本犬がどれだけ良くても、後ろがばらけていれば、良い子が出ても再現できません。
- 家系図に同じ犬舎名が繰り返し出ているか:系統の読み方で書いたとおり、繰り返しがあれば「何が固定されているか」が読めます。読めない牝は、起点にしても方向を決められません
- 同腹の兄弟姉妹の情報:1頭だけでは、その出来が系統か偶然か区別できません。同腹に揃って同じ傾向が出ているかを聞きます
- 欠点を隠さない売り手から買う:基礎牝の欠点は次の世代で選抜すべき対象で、知らされなければ選抜できません。欠点を先に言う売り手のほうが結果的に安全です
- 健康記録と検査結果:推奨される検査項目は犬種で異なります。何を確認済みで何が未確認かを書面で受け取ります
- 血統書の名義:名義が自分に変わっていないと一胎子登録の申請ができません。引き渡し時に必ず確認します
何世代で「系統」と呼べるのか
「何世代で完成」という決まった数はありません。判定するのは世代数ではなく、再現性です。
基準はひとつです。相手を替えても、狙った特徴が同じように出るか。 特定の牡と組ませたときだけ良い子が出るなら、それはその牡の力であって自分の系統の力ではありません。
したがって最低限、次の工程が必要になります。
- 基礎牝から娘を残す
- その娘たちを複数の異なる相手と交配する
- 出た子を比べて、共通して残る特徴を確認する
1本の線を伸ばすだけでは検証できません。比較対象を自分で作る必要があります。
世代が進むほど手元の頭数は増え、全部は残せません。各代で「残す1頭」を決める作業そのものが、系統を作る作業です。このとき選ぶのは一番きれいな個体ではなく、次に繋げたい特徴を持っている個体です。
系統が崩れる典型的な原因
崩れ方にはパターンがあります。
- 残す個体を「売れ残った子」で決めてしまう:良い子から先に売れるので、これを繰り返すと系統は毎代少しずつ下がります。残す個体は生後の早い段階で決め、売らないと決めておきます
- 一度に相手を替えすぎる:毎回違う方向の牡を使うと、何が効いたのか分からなくなります。検証できない変更は、系統には積み上がりません
- 記録を取っていない:数世代前の交配で「なぜその相手を選んだか」を覚えていられる人はいません。台帳がなければ偶然の連続になります
- 基礎牝の引退時期を計画に入れていない:上限まで使い切ってから次を考えると、後継の牝がいないまま数年空きます。引退の1〜2世代前に後継を決めておくのが前提です
- 犬舎名を失う:JKC ではクラブ会費が切れて6カ月を経過すると犬舎名も廃舎になります。何世代積み上げても、会費の管理ひとつで名前のほうが先に消えます
※法令・JKC 規定の内容は 2026年8月時点のものです。改定されることがあるため、繁殖前に必ず公式の最新情報を確認してください。