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モルフ計算の使い方とヘテロ(het)の読み方|66%・50%の意味と掛け合わせの考え方
モルフ遺伝ヘテロ爬虫類
爬虫類のブリーディングでは、交配を決める前に「この組み合わせで何がどのくらいの確率で生まれるか」を把握しておく必要があります。ここを外すと、狙ったモルフが出ないまま1シーズンを消費することになります。
ブリちょくではモルフ計算機を無料で公開していますが(ボールパイソン・レオパードゲッコー対応)、計算結果の意味が分かっていないと数字を読み違えます。特に「66% het」という表記は誤解されやすいところです。この記事では、計算の考え方と結果の読み方を整理します。
まず遺伝形式を3つに分ける
モルフの計算は、そのモルフがどの遺伝形式かで変わります。計算機も同じ3分類で処理しています。
| 遺伝形式 | 1つ持つと | 2つ持つと | 例 |
|---|---|---|---|
| 劣性(recessive) | 見た目に出ない(=ヘテロ) | 見た目に出る(ビジュアル) | アルビノ、ブリザード、パイボールド |
| 共優性(codominant) | 中間的な見た目になる | より強い別の見た目になる(スーパー体) | パステル→スーパーパステル |
| 優性(dominant) | 見た目に出る | 見た目は1つのときと同じ | スパイダー など |
最初に確認すべきは「そのモルフが劣性かどうか」です。劣性であれば、見た目がノーマルの個体が遺伝子を隠し持っている可能性があり、ここから「ヘテロ」という考え方が出てきます。
ヘテロ(het)とは何か
ヘテロは、劣性遺伝子を1つだけ持っていて見た目には出ていない状態を指します。英語の heterozygous(異なる対立遺伝子を持つ)の略で、日本語でも「ヘテロ」「het」と表記します。
対して、劣性遺伝子を2つ持って見た目に出ている個体はビジュアル(またはホモ)と呼びます。
重要なのは、ヘテロは外見では判別できないということです。ノーマルに見える個体がヘテロなのかどうかは、見ただけでは分かりません。だから確率で表記します。
「66% het」は遺伝子を66%持っているという意味ではない
もっとも誤解されやすい点です。66% het は「その個体がヘテロである確率が約66%」という意味で、遺伝子の量や強さを表すものではありません。持っているか持っていないかのどちらかで、中間はありません。
なぜ66%になるのかを計算で確認します。
66% het が生まれる交配
ヘテロ同士(het × het)を掛けたときです。劣性遺伝子を a、正常なほうを A とすると、子の組み合わせは次のようになります。
| A | a | |
|---|---|---|
| A | AA | Aa |
| a | Aa | aa |
- AA(1)— 遺伝子を持たないノーマル
- Aa(2)— ヘテロ。見た目はノーマル
- aa(1)— ビジュアル。見た目に出る
生まれた子のうち aa は見た目で判別できるので除外できます。残る「見た目がノーマルの3個体」の内訳は AA が1・Aa が2。したがって、
見た目ノーマルの個体がヘテロである確率 = 2 ÷ 3 = 約66.7%
これが「66% het」の根拠です。3頭のうち2頭は当たり、という意味だと理解すると実感に近くなります。
50% het が生まれる交配
ヘテロ × ノーマル(非保有)の場合です。Aa × AA なので子は AA が1・Aa が1。ビジュアルは生まれず、全頭が見た目ノーマルになります。そのうちヘテロは半分なので 50% het です。
100% het が生まれる交配
ビジュアル × ノーマル(非保有)の場合、aa × AA なので子は全頭が Aa=確実にヘテロです。この場合は確率ではなく確定なので 100% het と表記します。「ポッシブル(possible)」が付かないのはこのためです。
ビジュアル × ヘテロ(aa × Aa)では、子は Aa と aa が半々になります。見た目に出なかった個体(Aa)はすべて100% hetです。
まとめ
| 交配 | 見た目ノーマルの子の表記 | ビジュアルは出るか |
|---|---|---|
| ビジュアル × ノーマル | 100% het(確定) | 出ない |
| ビジュアル × ヘテロ | 100% het(確定) | 出る(約50%) |
| ヘテロ × ヘテロ | 66% possible het | 出る(約25%) |
| ヘテロ × ノーマル | 50% possible het | 出ない |
「possible het(ポッシブルヘテロ、pos het)」は確定していないという意味です。66%・50% には必ず possible が付き、100% het には付きません。
ポッシブルヘテロを確定させる方法(プルーブアウト)
66% や 50% のままでは、その個体が本当に遺伝子を持っているかは分かりません。確定させる唯一の方法は、実際に繁殖してビジュアルを出すことです。これをプルーブアウト(証明)と呼びます。
- ビジュアルと掛けるのが最短です。相手が aa なので、対象個体がヘテロならビジュアルが約50%出ます
- ビジュアルが1頭でも出れば、その個体はヘテロで確定します
- 逆に出なかった場合、「持っていない」と断定はできません。確率的に出なかっただけかもしれないためです。産子数が増えるほど「持っていない」可能性は高まりますが、ゼロにはなりません
この非対称性は販売表記に直結します。 証明できたものは 100% het と書けますが、証明されていないものを 100% het と書くことはできません。
複数のモルフを同時に狙うときの計算
計算機は1つの遺伝子ごとに計算します。複数モルフの組み合わせ(コンボモルフ)を狙う場合は、各モルフを個別に計算して確率を掛け合わせます。各遺伝子が独立に遺伝することを前提とした概算です。
たとえば、モルフAが25%、モルフBが50%で出る交配なら、両方を持つ個体が出る確率は
0.25 × 0.50 = 0.125 → 約12.5%
になります。ここが実務で効いてくる点で、狙うモルフを増やすほど目標個体の出現率は急速に下がります。産卵数が限られる種では、1シーズンで狙いどおりの個体が1頭も出ないことが普通に起こります。
計画を立てる際は、何シーズンかけるのか、途中世代(F1)をどう扱うのかまで含めて考えてください。
計算結果はあくまで理論値
計算機が出すのはメンデル遺伝に基づく理論上の期待値で、各個体は確率に従って独立に決まります。
- 25%と出ても、4個体産まれれば1頭出るという意味ではありません
- 産子数が少ないほど、実際の結果は理論値から大きくずれます
- 「50%なのに10頭全部出なかった」も確率的には起こり得ます
また、遺伝形式そのものが未確定なモルフや、複数の遺伝子が関与するモルフもあります。ラインブリーディングで強化するポリジェニック(多因子)の形質は、この計算の対象外です。
販売時の表記で守ること
計算と表記はセットです。ブリちょくを含め、出品時には次を守ってください。
- 確定していないヘテロには必ず「possible(ポッシブル)」と確率を明記する。「het アルビノ」とだけ書くと 100% het と受け取られます
- 確率の根拠となる両親の情報を書く(例:「両親ともヘテロのため 66% possible het」)。買い手が自分で検算できます
- プルーブアウト済みなら、その旨を書く。証明された 100% het は価格の根拠になります
- 遺伝子検査で確定できるモルフであれば、検査結果を開示する
ポッシブルヘテロを 100% het と表記して販売すると、買い手が繁殖に使った段階で問題が発覚します。遺伝の表記は、後から必ず検証される情報だと考えてください。
価格の付け方は生体の価格設定、繁殖の実務そのものは爬虫類の繁殖と孵卵の基本にまとめています。販売にあたっての法的な要件は爬虫類の販売と第一種動物取扱業を確認してください。